ライリー・ノース 復讐の女神

アメリカ/香港 2018
監督 ピエール・モレル
脚本 チャド・セント・ジョン

ライリー・ノース 復讐の女神

娘を理不尽に殺された母親の、命がけの復讐を描いたアクション映画。

なんせ監督が96時間(2008)のピエール・モレルですんで。

そりゃもう、みんなが期待するのは「女版リーアム・ニーソン」だろうと。

そこは間違ってもグロリア(1980)じゃないわけですよ。

いやまあ、別にね、予想外の冒険をしてくれてもいいんですけどね、あえてこの題材で毛並みの違うことをやられても戸惑うだけだし、なんのためにそんな裏切りを?って話なわけだ。

要は多少漫画チックだろうがスカッとさせてくれればいい。

過剰な期待はハナからしてない。

私だけじゃないと思うんですよ、そう考えてたのは。

さあ、今回はどういう趣向だ?「オカンは元特殊工作員だった!」か?それとも「伝説の女グリーンベレーだった!」か?なんでもいいけど、ある程度は信憑性をもたせてね、と。

あとは「強い女」をどう演出するか?

そこに96時間との差異を見いだせれば、ほぼ成功と言って良いのでは、と私は思ってた。

そしたらだ。

なんと驚きなことにオカン、ずぶの素人。

工作員どころか、暴力沙汰にもまるで縁のない一般女性。

いや、ちょっと待て、と。

これ、話が変わってくるぞ、と。

マフィア相手に昨日まで普通のママだった女性が単身復讐を挑むなんて、どう考えたって無理筋ですから。

正面から挑んだところで無残に惨殺されるのが関の山。

かといって、知略を尽くし、非暴力的な手段で組織を壊滅に至らしめることができそうなタイプでもない。

さて、オカンはどうしたか。

5年間、姿をくらますんですね。

その間に地下格闘技に出場したりとか、色々自分を鍛えてたみたいなんですけど、帰ってきたときにはなんだか別人になってた。

男相手に無敵。

銃の扱いに手慣れているばかりか、殺人の技術にも長じている。

もう、キル・ビル(2003)のユマ・サーマン並に無双なんですね。

うーん、これ、どうなんだろう・・・と。

もしこの映画がケレン味たっぷりのカンフー映画なら、それでもよかったかもしれない。

修行を積んで強くなったんだね、うんうん、と納得することもできる。

でも、今回の場合、相手は闇社会に巣食うマフィア組織ですから。

自己鍛錬でどうにかするにも限界があるだろう、と。

また監督が、妙にリアリズムを追求してて。

割と組織の背景とか、警察との関係性とか、じっくり描いてたりするんですよね。

で、もっともらしさが整ってくれば整ってくるほど、主人公の強さが胡散臭くなってくるわけです。

いやいや、たかが5年間鍛えただけでこんな海千山千の連中と渡り合えるはずがないだろう、と。

なんでシンプルに主人公を元軍人とかにしなかったんだろう、と思いますね。

そりゃありきたりですよ、ありきたりですけどね、一見非力な女性を化けさせる手段としては「修行」よりもはるかに説得力があったはずだし、カタルシスも得られたと思うんですよね。

もし、どうしてもこの設定でやりたかったんだとしたら、暴力に真正面から暴力をぶつけるのではなく、アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ(2010)みたいに、搦め手の復讐劇にするべきだったと思いますね。

主人公を超人化したことが、意図した現実味を遠ざけてることに気づいてない一作だと思います。

誰もピエール・モレルにこんなの期待してない・・・と思うんですが、どうなんですかね、一応、ヒットしたみたいですね。

私はちょっとついていけなかったですね。

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