イギリス 2018
監督、脚本 トム・エドマンズ

老齢の殺し屋と、死にたい小説家志望の若者の面倒くさい駆け引きを描いたブラックコメディ。
もうタイトルがほとんど内容説明しちゃってるんですけど、早い話が「自分を殺してくれ」と殺し屋に依頼したはいいが、最終的に翻意「やっぱり依頼は撤回する」と伝えたものの、契約は破棄できない、と殺し屋が一人暴走するお話なわけでございまして。
よくある、といえばよくあるプロット。
どこかで見たような、読んだような。
しかし、最近は映画にまでこんな説明くさいタイトルを冠するようになってきたんですかね。
ラノベや漫画じゃないんだから。
原題、DEAD IN A WEEKなんで、言うまでもなく1ミリもかすってないです。
こういうのって、タイトルではなく、テキストだと私は思うんですけど、これも時代の流れなんでしょうかね、普通に頭悪い気がして仕方ないんですけど、まあ、いいか。
基本、ストーリーに意外性は全くありません。
なんで死にたがり(主人公)が生きようと思ったのかな?恋でもしたのかな?と想像してたらそのとおりでしたし。
引退を迫られ、クビ寸前の殺し屋、ってことはきっと組織だか組合だかがあって、何らかの義務を果たさないといけないんだろうな、と思ってたら案の定でしたし。
中盤ぐらいまで「もう少しひねろうよ・・・」と、テンション上がらないままだったのは否定できません。
ま、じいさんの殺し屋が、実は家庭では、妙にアットホームな良き亭主だったりしたのはギャップが面白かったんですけどね、一番肝心な「死にたがりを変えた恋」をロマンチックかつドラマチックに描けなかったのが本作最大の難点でしょうね。
大恋愛なロマンスが軸にあってこその決死の攻防なわけで。
なんとなく彼女ができたから、生きていようかな・・じゃやっぱり弱いし、お互いかばい合う様子にも真実味が付加されない。
こいつら、ギリギリの場面で裏切るんじゃ・・なんて、邪推したりもしてしまう。
殺し屋の「老いに抗う日常」を深堀りして、大きく尺を割いていたのも物語のバランスを損ねてる気がしましたね。
実は殺し屋が主人公なんじゃねえのか?と思えるほどのこだわりっぷりなんです。
本当は心優しき老夫婦の絆を描きたかったのか?ひょっとして隠れた主演は殺し屋の妻?とあたしゃ思ったほど。
それは物語のエンディングにもそこはかとなく反映されていて。
まさかこんなシニカルなオチが待ち受けているとは思わなかったですね。
監督、いくつなのか知らないですけど、実は若い人にも恋愛にも興味ねえんじゃねえのか?!という気すらしてくるバッドエンドでして。
厳密にはバッドエンドと断定するだけの豊富な材料が出そろってるわけじゃないんですけど、それにしてもなんでこんなに厭世的なの?と私はちょっと考え込んでしまった。
順当に考えるなら老齢の殺し屋こそが最後には踏みつけられてしかるべきであって。
そこを逆転させちゃうんだから、なんだか屈折してるなあ、と。
これこそが英国らしい、といえば英国らしいコメディなのかもしれませんけどね。
ちょっと偏り気味ではあるが、よくあるブラックコメディ、と思っていたら最後におかしなひっくり返し方をしてきた怪作。
嫌いではないですけど、こんな風に一方を偏重するなら最初から殺し屋目線で物語を紡いで欲しかった、と思ったりしました。