シークレット・ヴォイス

スペイン/フランス 2018
監督、脚本 カルロス・ベルムト

シークレット・ヴォイス

記憶喪失に苦しむ往年のカリスマ女性シンガーと、シンガーの熱烈なファンである女の奇妙な関わりを描いた作品。

監督はマジカル・ガール(2014)で一躍脚光を浴びたスペインの俊英カルロス・ベルムト。

そりゃ期待するなという方が無理、ってなもんでしょう。

屈折した愛憎劇に、魔法少女などというとんでもない異物を放り込んだ処女作は孤高の完成度と独創性を誇るエピックな一作だったと思うんですが、2作目にあたる本作も負けず劣らず高いオリジナリティを誇る物語で、素晴ら・・・・・・・・・・・と、言いたいところなんですが、うーん。

うーーーーーーーーーーーーーーん。

これどうなんだろうなあ。

少し話がそれますが、いわゆるミュージックビジネスの世界では「二作目のジンクス」という言葉があるんですよね。

ご存知のかたも多いかとは思うんですけど。

ファーストアルバムでメガヒットをはなったミュージシャンに限って、なぜか二作目で大きくコケるケースが多いのをそう呼ぶわけですが。

それがそのまま当てはまる、というわけではありませんが、これある意味で似たような状況とも言えるんじゃねえか?と私は思ったりもするんです。

やっぱりね、処女作であれほど大胆な異文化交流をやってのけたベルムトが、今回は記憶喪失の元シンガーって、なんだ?そのどこにでも転がってそうな題材は?って話であって。

しかもその元シンガーが再びステージに上るために、振り付けや佇まいを指導するのが数十年来の熱烈なファン、というのがね、なんだかとても70年代っぽいストーリーテリングだな、と。

もしこれが意外性を狙ったつもりの作劇ならはずしてるし、不勉強だろう、と。

既視感強いです。

どっちかというと、サブストーリーで展開する、ないしはオチへの橋渡しとして流用する、ってなレベルのネタ。

それメインにお話を展開させるのはやっぱり「引き」が弱いですし、どう結ぶつもりなのか、大きな期待を抱けないと思うんですよね。

だってうまくいくはずがないから。

仮にうまくいったとしても、ろくな結末が待ってるはずがないから。

予想外の裏切りや、驚きの着地点が待ってるとは考えにくい。

で、そんなどこかで見たような物語は半ば予想どおりと言っていい結末でもって、アンハッピーエンドを引き寄せます。

明かされた真実に、多少の驚きはあるんです。

けれどそれすら小さなデジャヴ。

そういうのはどこかで見た、聞いた、読んだ気がする、的な。

さらによろしくないのがエンデイングでして。

はっきり言ってなにがなんだかさっぱり意味がわかりません。

大きなテーマとして、二人の女の「母と娘の物語」でもあるんで、呪縛からの解放と考えるなら象徴的ではあるんですが、だからって突然白日夢か?妄想か?みたいなことをやられてもついていけないわけです。

ループさせたいのなら、余計に幻惑させるべきではなかった、とも思いますし。

普通にうまいのは確かなんですよ。

後から「そういう意味だったのか」と気づくカットの数々や、シナリオ構成の堅実さ、引き込まれてしまいそうになる絵作り等、退屈することはない。

でもマジカル・ガールに比肩するほどのものではないし、おかしな力みをオレ流と勘違いしてるんじゃないか?といった懸念が幾分残る。

つまらない、とはいいませんが、なぜこの題材なんだろうという懐疑と、上手に落とし所を用意できなかったがゆえの迷走のようにも思える点がマイナス評価、といったところでしょうか。

やりたかったことは理解できるんですけどね、これでは伝わりにくいし、しっくりくるための距離感があまりに遠いと思う次第。

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