オランダ 2018
監督、脚本 シアラ・セディグ
山奥のロッジで休暇をのんびり過ごすためにやってきたカップルが体調不良になるお話。
「侵略SF」の体裁で売りたいみたいですけど、この作品を侵略SFだと思って見たら間違いなく落胆します。
ご覧になった方は、私の冒頭での説明が、まさに正鵠を射ている、ときっと納得してくださることでしょう。
それぐらい何も起こらない。
いや、ま、厳密にはなにかが起こってる風ではあるんですけど、描かれてるのは「二人して森に行ったら鼻血が出た、なんか具合が悪い、以上」でしてね。
私なんざこれは心理ホラーなのか?と中盤を過ぎたあたりで疑い出したほど。
多分、監督はイット・カムズ・アット・ナイト(2017)みたいにしたかったんだと思うんですよ。
状況説明だけで恐怖を喚起する、みたいな。
この作品では原因を究明することや、真相はさして重要じゃない、と監督は考えてるはず。
でもね、それも高い演出力があってこその話であって。
緊張感がなかったとは言いません、だけど人里離れた山奥での非日常を違和感や不気味さで染め上げるほどの手腕は発揮できてない。
ただ「なんか変」なだけで終わっちゃってるんですね。
そもそもネタが乏しすぎる、ってのもある。
鼻血と体調不良、閉めたはずのドアが頻繁に開いてる、ってだけで尺はもたないですよ。
いくらなんでも、もう少しハッタリ効かせてくれないと。
また主人公カップルの男がねえ、機転の利かないとぼけた野郎で。
やれることはもっと他にあるだろう、とつっこみたくなること数度。
更に言うなら、終盤の展開なんて「ネットがつながってるのになぜそうなる?バカなのか?」としか言いようのないものであって。
携帯通じないからネットも当然駄目ってわかるでしょ?と暗黙の了解を踏まえての流れだったのかもしれませんけどね、そういう部分でデティールをないがしろにしちゃうからリアリティが薄れていくわけで。
特にこういう作品の場合、セリフまわしよりも「なにができてなにができないのか」「どういう状況下にあってどう行動が制限されるのか」がとても重要だと思うんですよ。
なんだか大変そう、では誰の共感も得られない。
未熟、の一言ですかね。
この仕上がりなら、貧弱でもありきたりでもかまわないからオチをつけるべきだった、と思いますね。
背伸びして失敗してる印象。
ちなみにここからネタバレなんですけど(ご覧になる予定の方はこの先を読まないように)どうやら体調不良の原因は高周波活性オーロラ調査プログラムだったみたいです。
なんじゃそりゃ。
ただの不注意じゃねえかよ。
だめだこりゃ。