監督 アレクサンドル・アジャ
原作 リズ・ジェンセン

いや、ちょっと待て、9歳になるまでに8回死にかけた、ってどれだけついてないんだよ!と事件性を疑ってしまいそうになりますが、そのどれもが不可抗力に近い出来事ばかりだというのだから呆れるやら、驚くやらで。
神は何処におわすのか、と思わず天を仰ぎ見たくなる。
まあ、独特なプロットですよね。
こんな突飛な前提でちゃんと物語に落とし所は存在するのか?と不安になってしまうほどに。
しかも9度目の事故は父親に崖から突き落とされた、ってんだから穏やかじゃない。
ルイ、全身を骨折した挙げ句、意識不明の昏睡状態に陥ります。
ストーリーは治療に当たる医師と悲嘆に暮れる母親のやり取りと、ルイの過去を交互に描く形で進行していきます。
シナリオ構成はおおむねミステリ仕立て。
父親とは仲が良かったはずなのに、どうして彼はそのような凶行に及んだのか?
事件後、行方不明の父親は今、どこに?
少しづつ明らかになっていく新事実。
同時に幾分オカルト色が濃くなっていく。
全く先が読めません。
ちゃんと現実味のあるオチが期待できるのだろうか?と疑う気持ちが増大していったりもして。
そして迎えたエンディング。
もうね、見事にしてやられたの一言でしたね。
「衝撃のラスト9分」に偽りなし。
この作品がうまかったのは、ミステリとファンタジーの端境を上手に綱渡りしていったことに他ならないように私は思います。
至極単純に考えるならね、最初から真相は明らかなんです。
用意された駒は決してそんなに多くはないですから。
「最初からわかってた」なんて言う人もひょっとしたら居たかもしれない。
特にミステリに強い人とかならね。
けれど監督は、ミスリードをミスリードと感じさせないやり口でそれに対抗する。
ロジックで決着つけるかどうかはわかりませんよ?とばかり、昏睡状態にある少年を起き上がらせてみたり、謎の怪物の存在を匂わせてみたり。
私は完全にそんな「謎めかし」に騙されてしまいましたね。
唯一残念だったのは、真相を暴く方法がいささか胡散臭いやり口だったこと。
それはないだろ、とつっこんでしまいそうになったりもしたんですが、まあ、だまされちゃってるんであんまり大きな口は叩けません。
しかし、ハイテンションやヒルズ・ハブ・アイズで名を馳せたアジャがこんな作品を撮るとは・・・とちょっと驚かされましたね。
成長したなあ、アジャ。
先入観を持たずに見てください、とおすすめしたいですね。
少年の身に起こったことはいったいなんだったのか。
真相が語りかける救われなさに、胸が締めつけられる思いを抱いたのは決して私一人じゃないはず。
秀作だと思います、お見事。
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