アメリカ 2003
監督 アレハンドロ・G・イニャリトゥ
脚本 ギジェルモ・アリアガ

ひとつの心臓を巡ってその人生を翻弄される三者の愛憎劇を描いた作品。
しかしイニャリトゥ監督はオムニバス風にいくつもの物語が同時進行していく構成が好きだなあ、と。
様式はデビュー作アモーレス・ペロスとよく似てます。
ただ、前作に比べ今回は物語を牽引するエンジンの性能をバージョンアップ、確実にその駆動力をあげてきてます。
つまりは、進化してることが手にとるようにわかる、ということ。
時間がいったりきたりする複雑な構成なのに破綻がないことにも感心させられますが、私がかつて指摘した「それぞれのストーリーが絡み合わないので同居の必然性を感じない」と問題視した部分も見事改善してきた。
描かれているのはひとつの因果。
どのような偶然が重なって、誰が何を得て、何を失ったか、その結果、輪の中の世界はどのように色を変えたのか、まさに生々流転とも呼ぶべき人間ドラマを緻密に構築。
なんかもうこりゃ文学なのでは、とすら思いましたね。
特に私が凄いな、と思ったのは、運命に翻弄された結果いったい何が残ったのか、という点をきちんとエンディングで示唆していること。
詳しくは書けませんが「それでも人生は続いていく」とのセリフをキーワードに、これは再生の物語に他ならない、と私は思いましたね。
ナオミ・ワッツの鬼気迫る熱演、ベニチオ・デル・トロの異様な存在感も素晴らしい。
傑作だと思います。
これはちょっと侮れないぞ。
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