アメリカ 2018
監督 ステファノ・ソッリマ
脚本 テイラー・シェリダン

アメリカとメキシコの国境付近を舞台に繰り広げられる麻薬戦争を描いてスマッシュヒットをはなったボーダーライン(2015)の続編。
前作ではエミリー・ブラント演じるケイトを主人公に物語は動いていきましたが、今回は正体不明の工作員アレハンドロが主役。
そうです、ベニチオ・デル・トロが演じた例の怖すぎるあいつですよ。
あたしゃてっきり続編ではケイトのその後を描いていくものだとばかり思っていたので微妙に肩すかしだったんですが、ま、これはこれで悪くはないです。
前作では描かれなかった、国家の策謀に関わる司令官の苦悩と、現場工作員の葛藤が赤裸々に描写されてましたしね。
そういう意味では脚本のテイラー・シェリダンはいささか目線を変えてきた。
一作目が麻薬戦争そのものの実態と、その渦中にいる人を描くことに力点をおいていたとするなら、本作はアメリカの側から見た隠密作戦の内情暴露、といった感じ。
常に死の影がちらつく作戦行動中のひりつくような緊張感、権謀術策渦巻く非合法組織の駆け引きに見る非現実感は、ヴィルヌーブ監督にも負けず劣らずの手管だった、と言っていいでしょう。
そこは文句なしに及第点以上。
ただ、アレハンドロの内面を掘り下げようとしたことで、キャラクターそのものの印象がかなり変わってしまった、というのが私の場合はあった。
「何を考えてるのかわからない冷酷非情なプロフェッショナル」といった人物像が、生身の感情も併せ持つ人物に成り代わっちゃったんですよね。
これね、微妙だと思うんです。
一作目のインパクトを帳消しにしていく作業とも言えるわけですから。
つまりは「仕切り直し」にも見えちゃうんです、そういう意図がなかったにしても。
やっぱりアレハンドロは少女を守って荒野を行く、なんてやっちゃあいけなかった、と思うんですよ。
いや、あんた、どう考えても役立たずはその場で後腐れなく殺して置いていくタイプだろうがよ、って。
なんで急に優しくなっちゃってるの?信仰心でも芽生えたのか?といぶかること後半60分。
で、最終的な物語の落とし所がまたよくわからなくて。
このエンディングだと、国境付近の紛争に翻弄される人々を描くのではなく、紛争に乗じるアンチヒーローを創出しようとしてるとしか思えないんですよね。
うーん、どうしたいんだテイラー・シェリダン。
方向性が微妙にブレてきてやしないか?
単独作品としての完成度は前作に劣らず高いと思います、けれどもし3作目があるのだとしたら、このシナリオ進行は相当に変節しているような気がしてなりません。
できうることなら紛争の終結を仮想して欲しい、と私なんかは思うんですが、さてどうなることやら。
このあたりでやめておいたほうがいいんじゃあ・・・と懸念する私でございます。