アメリカ 2018
監督 ルーベン・フライシャー
原案 ジェフ・ピンクナー、スコット・ローゼンバーグ

スパイダーマンに登場する悪役として人気を博す、ヴェノムを主役に据えたスピンオフ。
かつてサム・ライミが監督したスパイダーマン3部作の、スパイダーマン3(2007)にもヴェノムは登場してますが、もちろんあのままってわけじゃあありません。
今回のヴェノムは造形がもっと爬虫類っぽい感じですよね。
アマゾン奥深くの高温多湿な湿地に生息してそうな。
ま、それなりに面影は残ってるんですけどね。
どっちかと言うと遊星からの物体X(1982)に近いかも。
なにがどうそんなにヴェノムが人気者なのか、アメリカでの評判はよく知らないんですけど、さしてこやつに強い興味を持ってない私のような人間が見ても映画は普通に面白かったりするんで、つくづくMCUの勢いはすげえなと、その一言ですね。
だってこれってね、物語の構造的にはSFホラーなわけですよ。
宇宙から飛来した不定形生命?みたいなのが人間に寄生して、意識下で共存するわけですから。
気味が悪いし、不気味だ、ってのが当たり前の感覚だと思うんです。
そんなに広く支持されるような題材じゃないですよね。
どっちかというとその手のファン向け。
なのにいざ公開してみたら老若男女を問わず大ヒットときた。
もちろん水準以上のものを安定供給してきたマーベル・スタジオのブランドも影響してるでしょうし、キラーコンテンツであるスパイダーマン関連の作品、というのもあるでしょう。
でもここまで熱烈に歓迎されるとは、制作側も思ってなかったんじゃないでしょうかね。
ある種、熱に浮かされた状態にあるのかもしれませんね、見てる人たちみんな。
ま、つきまとうホラーテイストを、コメディ調に演出することで帳消しにしたのはうまかった、と思います。
アクションシーンに恐ろしく力を入れてるのも効果的だった。
けど、それだけじゃあこの作品の人気の秘密は解き明かせないような気がする。
というのもね、割とストーリーはペラペラだったりしますからね、この作品。
手垢感はつきまとってるわ、恐ろしく現実味に欠けるわ、ヴェノムが主人公エディに寄生することで、何を学び、どう変節していったのか、その内面がまったく描けてないわ、で。
かつての大味なハリウッド大作の難点をそのまま受け継いでる、と言っていい。
なのになんか知らんが最後まで楽しく見れてしまう。
私も「マーベル熱」に浮かされてしまってるのかもしれません。
10年ぐらいしたらもう一度見直してみたいですね。
いつかはマーベル狂騒時代も終わりを告げる日が来ると思うんで、落ち着いた評価はその時に、といったところでしょうか。