インド/イギリス/アメリカ 2006
監督 ターセム・シン
脚本 ターセム・シン、ダン・ギルロイ、ニコ・ソウルタナキス

事故で重症を追ったスタントマンと偶然病院を同じくした少女の交流を描くファンタジー。
とはいってもファンタジーな部分はスタントマンが少女に語って聞かせる夢物語のパートだけで、他は至極現実的です。
先が見えず生きる望みを失いがちなスタントマンは無垢な少女の言葉で立ち直ることが出来るのか?が大筋での見どころなわけですが、率直に言うなら最も肝心なそのくだりはちょっと盛り上がりに欠けた部分もありました。
シナリオのせいもあるでしょうし、演出の問題もないとはいえない。
役者の涙で観客をもらい泣きさせようとする芝居はやっぱりどうしても臭くなる、と言うのが私の持論でして。
少女はスタントマンにどういう心の変化をもたらしたのか?が今ひとつわかりづらいまま、ただ滂沱の涙でなんとかしのいでるように私には見えたんですね。
そこはもう少しなんとかならなかったのか、と正直思う。
少女が達者な演技を披露していただけにもったいない、と感じましたね。
ただ、それを補ってあまりあるのが世界24カ国以上で撮影された夢物語のシーンでして。
ほとんどCGを使わずに撮影されたとは思えぬ非現実的美しさに眼は釘付け。
まさに監督の独壇場。
今回も「ミスマッチの妙」は冴え渡りまくってたように思います。
象が海を泳ぐシーンに始まり、古城でのアクションシーンまで、どういうロケーションに何を放り込めば絵になるか、ターセム監督は本当に熟知してる。
こういうセンスって天性のものだと感心することしきり。
総合的に判断するなら決して大傑作、と言うわけではないと思うんですが、彼にしかやれないことをやった、という意味でやはりこりゃ見ておくべきか、と思う次第。
なんかもう多少ゆるくてもいい、と思えてきてしまうんですよね。
ちょっと印象的だったのがラストシーン。
ふいに監督の映画愛が匂い立ってきたりもして、こういうことが出来るんならクライマックスでもっと上手にやってくれ、とはがゆく思ったり。
夢物語に少女が登場するメタな展開なんかも面白かったんで、それらを次回こそは上手にまとめて大傑作を、と期待する私ではあります。
それができる監督だと思うんですけどねえ。