ボーイ・ミッシング

スペイン 2016
監督 マル・タルガローナ
脚本 オリオル・パウロ

ボーイ・ミッシング

少年の誘拐事件に端を発する予想外のトラブルを描いたサスペンス。

ロスト・ボディ」「インビジブル・ゲスト」のオリオル・パウロが脚本を務めてますんで、否が応にも大どんでん返しへの期待が高まるわけですが、結論から言っちゃうと、あっ、と言わされはしたものの、なんとなくもやもやしたものも残る、といったところでしょうか。

今回、初監督に挑戦したマル・タルガローナは意外といい仕事してるんですけどね。

ずっと製作だけをやってきた人間とは思えない手慣れた舵取りを感じさせてくれましたし。

余計なことは一切やってないし、謎が謎を呼ぶ構成、緊張感の途切れぬ語り口等、プロはだしと言っていい。

中盤で、事件そのものの真相を一旦は暴きながらも、実はそれが序章に過ぎなかったとする筋立てもよくできてる、と思いましたし。

サスペンスであること以上にドラマとして普通に見応えがあるんですよね。

欲を言うなら辣腕弁護士である母親の盲愛に、もう少しエキセントリックな味付けがあればさらに盛り上がったか、とは思うんですが、そこは何を優先するのかによる、のかもしれません。

で、問題はですね、真犯人の存在が、物語全体を支配するものではなく、後からとってつけたような感じになっちゃってること。

多分、最後まで見て、誰もが「いったいいつお前はそんな計画を立てたんだ?」と頭をひねると思うんですよ。

つまりは前半の誘拐事件そのものが伏線として活きてない。

このオチを完璧に機能させようと考えるのなら、誘拐事件の真相そのものを真犯人が熟知している、という描写を忍ばせる必要がある。

それが抜け落ちちゃってるんで、どうしても後付けでどんでん返しだけに執着した印象が残る。

弁護士の母と真犯人の関係性を、もう少し尺を割いて掘り下げておく必要もあったかもしれません。

そうすることで動機もさらに明確となる。

面白くなかったわけじゃないんですが、あと一歩届かず、ですね。

練られたシナリオに好感は持てるんですが、オリオル・パウロにはさらなる高みを目指して欲しい、というのがファンとしての本音。

ま、退屈はしないと思います。

サスペンスとして相応の力強さはある。

余談ですが、あらすじをジャケット全体に印字するクロックワークスの戦略意図がよくわからん。

エヴァかよ。

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