ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

アメリカ 2016
監督 ティム・バートン
原作 ランサム・リグズ

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

ティム・バートンなことだし、きっと薄暗くねじくれてるんだろうなあ、でも終わってみれば特に残るものもなかった、って感じなんだろうなあ、でも今回はジョニー・デップ出てないし何か違うのかなあ、そういえばビッグ・アイズ(2014)見てないなあ、などと、どうでもいいことをつらつら考えながらぼーっと見てたら、意外にも至極真っ当なファンタジーでちょっと驚いた。

原作が優秀なのかもしれませんが、恣意的に作られた時間の牢獄で、同じ1日をくリ返すことによって生き永らえる異能の子どもたち、という設定がまずは秀逸。

ある時刻を起点に「ループ」を作る、という発想が割と本気な時間SFのようでなかなかいい。

ループの外側に出てしまうと一気に経過した時間が押し寄せてきて老化してしまう、というルール作りも良く出来てる、と思いました。

これ、二重の役割を果たしてるんですよね。

置き去りにされた時間の中でさまよう存在としてなら、ああいう子どもたちもひょっとしたら居るかも、と胡散臭さを払拭する役割と、主人公の恋路の障害となる役割、特に後者は周到な物語構造だよなあ、と唸らされました。

ファンタジーなりの「理」が背景にあるんですよね。

だから蜂を口から吐く少年が居ようが、二口女な少女が居ようが、多少の荒唐無稽は安心して許容することができる。

物語の進行が最終的には、異能であるとはいえ非力な少年少女たちだけで巨悪に立ち向かう展開になるのもよくできてる、と思いました。

根底にあるのは試される勇気と、冒険心であって、おおこれはまさにファンタジーの王道じゃないかと。

それをこの異形の物語に組み込む抜け目のなさがなんとも小憎らしい。

ちょっと残念だったのは、危地を知恵と機転で乗り越える子どもたちのあなどれなさ、みたいな描写があんまりなかったこと。

行き当たりばったりで敵の本拠地に乗り込んだって勝てるわけがないから逃げ回ってたはずなのに、結構行き当たりばったりで乗り込んでなんとかなってしまってるのが説得力に欠けるか、と。

ここすごく大事だったと思うんですよ。

終盤の最終決戦をどう緻密に描くかによって、視聴後の感動は全然違ってきてたと思うんですね。

とりあえず白覆面の双子みたいな最終兵器があるなら、最初からさっさと使わんかい、と。

味方の陣容、戦闘力も計算せず乗り込んでどうするんだ、とつっこめてしまうのがね、ややルーズに感じられた部分でしたね。

ま、そのあたり、ティム・バートンらしいといえばらしいんですが。

多彩なキャラが様々な特殊能力を発揮して活躍するシュールな世界観は見てるだけで楽しいですし、監督も自己模倣の罠からようやく脱したか、などと考えたりもするんですが、あと少しのところで足を滑らせて登頂に失敗してる、そんな印象を受けた1本でした。

決して凡作ではないと思いますが、この題材ならもっと上手にやれる人がいる、そんな風にも思いましたね。

ペレグリン役のエヴァ・グリーンの凛とした美しさは眼福だったんですけどね。

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