スペイン/コロンビア 2016
監督、脚本 アテム・クライチェ・ルイス=ソリヤ

環境汚染著しい地球を捨て、新たな新天地を目指し、たった一人で恒星間宇宙飛行を続けるうら若き女性の孤独を描いた宇宙SF。
宇宙船で産まれたヒロイン、エレナは船が目的地に到着する20年後までずっとひとりぼっちで生活することを強いられてます。
それが物語の前提。
詳しくは描かれてないんですが、どうやら新天地に行けるのは限られた人だけのよう。
誰とも会話することなく、日々決められたルーティンワークを消化するだけの毎日。
そんなある日、船内の空気循環系統が故障する。
救難信号を受信して駆けつけるメンテナンス要員の若い男性。
エレナ、初めて見る男性にときめいちゃうわけですな。
あーはいはい、わかりました、パッセンジャー(2016)がやりたいんですね、と。
もー、ひとつ何が話題になるとすぐに類似商品がでるんだからほんと心根が貧しいよなあ、はずしちゃったかー、などと私は嘆息してしまったわけですが、それも開始20分まで。
同じような印象を持った人に忠告しておきます。
絶対に序盤で見るのを放り投げてはいけません。
20分後、驚愕の展開が待ち受けてます。
ネタバレになるので一切何も書けないんですが、丸ごと全部ひっくり返すとんでもない種明かしがあることだけは保証します。
正直、焦りました。
こんなに早々と物語の根幹に関わる部分をあっさり詳らかにしちゃって、この後どうするんだ、と。
最後までもつのかよ、と。
ところがどっこい新鋭ソリヤ監督、なかなかあなどれない力量の持ち主でして。
ネタばらししてからのほうが面白かったりするんだから大したもの。
いちいち説明っぽいセリフやナレーションを挟まずに、状況を悟らせる演出に長けてるんですね、この人。
ありていにいうならセンスがいい。
それはエンディングにおいてもいかんなく発揮されていて。
刹那のラブロマンスに舵をきるのか、と思わせておきながら、仰天の便法で想いを形にしてやったりする。
終わってみれば、ああこれは愛の物語だったのか、とふと気づく自分がいる。
いやいやこりゃパッセンジャーにも全然負けてないな、と。
あんまりお金のかかってない映画ですが、SFというカテゴリーでしか表現できない優れた一作だと思います。
シナリオの出来の良さ、構成力の高さに感服ですね。
思わぬ拾い物的な映画じゃないでしょうか。
もっと話題になっていい、と私は思いましたね。