2016 アメリカ
監督 ダンカン・ジョーンズ
脚本 ダンカン・ジョーンズ、チャールズ・リーヴィット

世界的に有名なMMORPGを映画化した作品。
ただ、日本ではゲーム自体の知名度があまり高くないので、ゲームを知ってて映画も見た、って人は少ないかもしれません。
かくいう私も存在すら知らなかった。
まあ、物語の世界観はありがちな指輪物語直系のファンタジーです。
そこはもう傍流ですらない。
平気でドワーフやらオークやら馴染みのある異生物の固有名詞を使いまわしてますし。
で、それら異種族が人間ともめる、というのも手垢にまみれたありがちなパターン。
そこを工夫が足りない、とみるか、とっつきやすく物語に入り込みやすい、と見るかは微妙なところでしょうね。
私はどちらかというと後者で、またこの手の使いまわしかよ、と思った事は否定できません。
もう、恐ろしい数の類似品がゲームのみならず、小説、マンガにも溢れかえってる、と思うんですよ。
同じ金をかけるならもっと他に映画にすべき題材はいくらでもあるのでは、と思うわけです。
また、有名なRPGだから、ってことでその知名度に依存してるのかどうかわかりませんが、登場人物の内面、とりまく環境を掘り下げることなくやたら駆け足な進行なのも疑問。
いきなり暗黒魔法でゲート、って言われてもこっちに取扱説明書があるわけじゃないんだから戸惑うほかない。
ただ、そんな底の知れたファンタジーの最中にあって、ダンカン・ジョーンズが凄く心を砕いてる、と思ったのはオークや魔法をどう映像化するか、といった点。
特に主な敵役たるオークの肉々しい体躯や、豊かな表情は、それだけでストーリーライン云々関係なしにひきつけられるものがあった。
なんだこの生き物、って感じなんですよね。
伝承がそのまま想像の世界から飛び出してきたような現実味があって。
魔法の発現もどこかスキャナーズを思い出させる派手さがあって良。
それに、あえて相手の土俵にのってやるならね、終盤のシナリオはそんなに悪くはなかった、と思うんです。
種族間に立ち、揺れるガローナに、ああいう役回りをふるのか、とシリアスな展開にちょっと驚かされもした。
続編ありき、で作られてる作品なんで物語はまるで収束してないまま終わってるんですが、やばい、これは続きを見たい、と思わせるエンディングではありましたね。
完全にロード・オブ・ザ・リングの後塵を排した一作で、別に新しいわけでも特別なわけでもないとは思いますが、続編次第では二番煎じのそしりをもまぬがれるかもしれない、そんな感触を得ました。
少なくともダンカン・ジョーンズの才気は反映されてるように思います。
総ずるなら、悪くはない。
問題は続編が制作できるのか、ってことでしょうか。