カナダ/フランス 2013
監督 グサヴィエ・ドラン
原作 ミシェル・マルク・ブシャール
重苦しい内容ではありますが、人の心の不可解さを丹念に描いた筆致は、さすがはドラン、の一言です。
ある種の心理ホラー、と言ってもいい内容だと思います。
ドランもインタビューで述べていますが、テーマとなっているのはストックホルム症候群にも似た共依存の関係性であり、介在する母と子の閉塞、屈折した環境です。
なんというか、切なかったですね、私は。
お互いに相容れないことはわかっているのに、そこにしかすがるすべを持たない二人。
暴力でしか他人とコミュニケーションをはかれない粗暴な男と、恋人をなくしたゲイがいびつな関係を築き上げていく描写は見ていて辛くなるだけでなく、その孤独の底知れなさにめまいを覚えるほどでした。
白眉はトムがサラに切々と農場の素晴らしさを語るシーンでしょうか。
狂気が育まれる現実を切り取ったかのようで、なんだかもう私はひたすら哀しく、怖かったですね。
少し残念だったのはエンディング。
ドランにこのような注文をつけること自体が間違っているのかもしれませんが、もう少しエンターティメントを意識してもいいんだよ、と思ったりはしました。
エンターティメントであるからこそ広く浸透する部分もあるかとは思いますし。
暗示的なシーンが印象的ではありますが、心理サスペンス、ホラーとして見るなら、大きなヤマはなく、だからどうした、という人も中にはいるかもしれません。
これまでの作品にはなかった試みもあって、意欲的な内容だとは思いますが、ファン以外には評価が分かれそうな気もします。