アメリカ 1976
監督 リチャード・ドナー
脚本 デヴィッド・セルツァー
エクソシストの後追いな印象は免れませんが、キリスト教圏における邪なる存在を子供の姿でもって具象化して見せた傑作でしょうね、やはり。
なんだかんだいって子供って、無垢なる存在である反面、動物的ですから。
大人が子供の躊躇なき残酷さに戸惑う心理を上手にくすぐってるのは間違いない。
ま、遡るなら「光る眼」とか、志向性の似た作品は過去にもあったんでしょうけど、この作品がうまかったのはそこに悪魔という宗教的教戒をはめ込んだこと。
そりゃもうサタニズムだー、ヨハネの黙示録だーと、外堀を固めるうんちくは山ほどあるわけで。
その手のキリスト教的世界観を背景として、ミステリ風に少しづつ少年ダミアンの正体が暴かれていく展開が怖くないわけがない。
なんせいきなり母親は山犬、ですよ。
なんなんだよそれ、どういうことなんだよ、と、以降登場する黒犬全部が異形の存在にしか見えなくなる有様。
ハッタリのかまし方が優秀すぎる。
次々と非業の死を遂げる周りの人物の「死に様」にこだわったのも見事でしたね。
「あなたのために云々」と呟きダイブする乳母のインパクトを皮切りに、貫かれるあの人、そして最後に待ち受ける驚愕の惨殺シーン。
もう、ほんとにね、夜中トイレに行けないです。
たいていのホラーには免疫があることを自負する私ですら、最後の犠牲者をとらえた一連のシークエンスには怖さのあまり声が漏れた。
見るのは2度目なのにもかかわらず、です。
ただまあ、さすがにオチに間してはね、今となってはわかりやすいパターンかとは思ったりもしますが、およそ40年前の作品でここまで怖がらせてくれたら上出来なんじゃないかと。
派手な流血沙汰なしでひたすら恐怖をあおる手管も私は評価したいですね。
ジェリー・ゴールドスミスの不安を掻き立てる音楽も素晴らしい。
忌まわしさが匂いたつようなオカルトホラーの必見作だと思います。