日本 1974
監督、脚本 石井輝男
タイトルが似たような感じで混同してしまいそうになるんですけど、激突!殺人拳(1974)の大ヒットに乗じて、新たに制作された空手アクション映画。
しかし地獄拳なあ・・・。
殺人拳もたいていなネーミングだったりはしますけどね。
後年の評価を著しく歪めそうだからもうちょっとちゃんとしようか、と東映のプロデューサーは思わなかったのか。
思わなかったんだろうなあ。
注ぎ込んだ制作費を回収できて、それなりに儲かればとりあえずはOKだったんだろうなあ。
ちなみに今回の千葉ちゃんは、甲賀忍者の末裔で私立探偵、という設定。
いきなり白ひげの爺さんに忍術の特訓を強いられる過去の場面で物語は幕を開けたりする。
もう、序盤からね「笑わせたいのか」とつっこみたくなるようなユーモア?が満載です。
忍術と空手がなぜ混同されてるんだよ、日本贔屓の外国人が作った映画なのかよ!?と首をかしげるデタラメさ加減はさておき、特殊工作員さながらに牢獄破りはするわ(もちろん千葉ちゃんが)、打ち合わせのシーンでは意味なく天井に張り付いてたりはするわ(そりゃもちろん千葉ちゃんが)で、これ真面目に見てていいのか?と悩むこと請け合い。
監督の石井輝男はあえてコメディっぽい演出も織り交ぜたみたいなんですが、空手(アクション)映画としての精度を上げることに腐心せず、笑いに走ってていいのか?と思わなくもありません。
ジャッキー・チェンが恐ろしく長く活躍してるのは、カンフーアクションに手を抜かず、常に新しい見せ方を工夫した上でユーモアも忘れない「メリハリの付け方のうまさ」にその理由があるわけで、カンフーがおざなりなまま笑いにだけ特化してたら遠の昔に過去の人になってた、と思うんですね。
千葉ちゃんの実戦空手をどういう形で凄みたっぷりに映像化するか?がまずは大事なんじゃないかと。
ま、激突殺人拳よりは、敵役との組手もさまになってるかな、と思います。
でも相変わらず残虐描写にやたら囚われてたりとか、突然フィルムをぶった切ったような編集があったりとかで、とても空手アクションの可能性を追求してる、とはお世辞にも言えない。
それほどアクションに強いこだわりがある人の撮り方じゃないんですよね。
日本映画の土壌そのものがこういう映画をキワモノと見ていたのかもしれませんし、また、アクション俳優が成立する素地が国内にはなかったせいなのかもしれませんが、同年代の香港映画と比べてみても手探りな印象は否めない。
なんかね、黄金の7人(1965)とか、あの辺りの犯罪者映画っぽく仕上げようとしてる節があるんですよね。
色々と余計なものが混ざっちゃって、とてもあんな風に洒脱な出来にはなってないんですけど。
いやいやそりゃどう考えても無理だろ、撮る前にわからんか?って話だ。
振り返るなら、東映との契約(いざこざ)に縛られて、一番いいタイミングで海外に行けなかった千葉真一というアクション俳優の不幸を目の当たりにしてしまったような気にもなったり。
ただ、千葉ちゃん本人は一切手を抜かず全力投球なんで、後追いで感じ入るものが全く無いわけじゃない。
千葉空手映画の入り口としては一番いいかもしれませんね。
あと、完全に居ても居なくてもいい配役で倉田保昭が出演してますけど、千葉ちゃんを食う勢いで本場仕込みのカンフー、披露してました。
さすがはアジアで名を馳せただけはありますね。
結局、この手の格闘映画って、自分のスタントチームがないと上手く行かないのかも、と思ったりもしました。
千葉真一がジャパンアクションクラブの運営に傾倒したのもわかる気がします。