フランス 2016
監督 ニコラ・ブナム
脚本 ニコラ・ブナム、フレデリック・ジャルダン、ファブリス・ロジェ・ラカン

電子制御された最新式の自家用車が高速道路で故障、時速160キロで暴走し始めて止まれない、さあどうする!ってな、コメディ。
アイディアそのものは非常にシンプルだと思うんです。
それこそジャンルを問わず、色んな映画が色んなシチュエーションで使いまわしてきた「その場を盛り上げるための小ネタ」に近い、と言ってもいい。
それを作品の中核的なプロットとした場合、問われるのはどうふくらませるかであって、パニックの演出に全てがかかってるといって過言ではないわけですが、とりあえず、妊婦とお調子者で余計なことしかしないジジイを同乗者とした家族旅行である、とした設定はなかなか秀逸だったと思います。
妊婦が居るから無茶なことはできないのに、ジジイがろくでもないことばかりする、という絵ヅラは容易に予想がつく。
それが、助かるものも助からなくしちゃうんじゃ・・、という「スリルを笑いに落とし込む作用」を促すに違いないのだろうなあと。
まあ、わかっててもやっぱり笑っちゃいますよね、これ。
一瞬の隙が死を招く状況で、夫婦の秘密が暴かれていく展開も悪くない。
よくあるパターン、といえばパターンなんですけどね、私は不自然さのないことに手垢感より安定感を感じました。
ちょっとした熟年夫婦のドラマが彩りを添えていたことは間違いない。
実際高速道路を暴走する車が存在したら、警察はどう動くのか?を現実に即して描写してみせたのも、コメディにありがちなルーズさを助長してなくて良かったと思います。
エンディングなんて、なるほどこう救うのか!とちょっとした驚きがあったりもした。
唯一の物足りなさをあげるとするなら、思ったより毒がなかったことですかね。
ファミリー層を意識したのか、ギャグも登場人物たちの言動も幾分抑揚に乏しいように思えた。
せっかく妊婦を用意してるのに、なんで160キロで暴走してる車の中で出産させないのだ?と私なんかは思ったりした。
それが後の展開に意表を突く感動をもたらすかもしれないのに、等々。
そこまで踏み込むのはなかなか難しいかもしれませんけどね。
普通に楽しめる一作だとは思います。
及第点、と言ったところでしょうか。