1982年初版 高野文子
白泉社

<収録短編>
たあたあたあと遠くで銃の鳴く声がする
花
はい-背すじをのばしてワタシノバンデス
絶対安全剃刀
1+1+1=0
おすわりあそべ
ふとん
方南町経由新宿駅西口京王百貨店前行
田辺のつる
アネサとオジ
あぜみちロードにセクシーねえちゃん
うらがえしの黒い猫
午前10:00の家鴨
早道節用守
いこいの宿
うしろあたま
玄関
大友克洋らと並んでニューウェイブの旗手と騒がれた作者の第一短編集。
私が持っている単行本は、85年の段階ですでに17版を増刷。
凄いなあ、と思う。
よくまあこの内容でそれだけ売れたものだ、と普通に驚きますね。
時代に求められていた、と言うことなんでしょうね。
初読は学生の頃でしたが、確かに当時は私も「なんだかよくわからないけど、これは何かが違う!」と思った。
今回再読してみて、現在の色んなマンガ作品と比較してみても、未だ異質で孤高だとは感じました。
いわゆる、70年代から連綿と続く少女漫画の系譜に「ない」んですよね、高野文子って。
全く違うところから突然変異的に世に躍り出た、というか。
感性が別物なんです。
それでいて作画力が非常に高い、というのが当時の漫画好きの琴線に触れたんでしょう。
はっきりいって、相当にアバンギャルドで意味のわからない短編も多いです。
けれどそれすらも含めて目新しかったし、単に作家性で切り捨てられぬ確信的虚構性があった。
でまた前衛っぽい作品群にまぎれて「ふとん」や「田辺のつる」みたいな、とんでもない傑作をふいに描いたりするからこの人はタチが悪い。
漫画そのものが変わろうとする時代に産み落とされた怪物的作品集でしょうね。
これで独りよがりにならない、ってのは尋常じゃないと思います。
読む人を選ぶ一冊かもしれませんが、漫画表現の可能性を押し広げた作品集であることは否定できないと思いますね。
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