アメリカ 2014
監督、脚本 セオドア・メルフィ
偶然お隣同士になった不良老人と少年の奇妙な交流を描いたコメディタッチの人間ドラマ。
はっきりいってこの手の映画の王道を行く内容で、どうストーリーが転ぶのか、なにもかも予想できる意外性のなさに幾分辟易させられたりはします。
いわく、気弱な少年にケンカのやりかたを仕込んだり。
競馬場や盛り場を連れ歩いたり。
そこはやはりもう少し創意工夫していただきたかった。
わかりやすすぎて、もうほんとに。
既視感たっぷりでね。
悪い言い方をするなら古臭い。
まだこういうパターンの「脱優等生」「いい子なだけじゃ駄目」を骨子としてドラマづくりをしますか?みたいな。
結局、時代性に沿った掘り下げ方をしてないから、不良老人ヴィンセントが単なるアイコンでしかないんですよね。
いやいや、何も教えてないじゃん、あんた、って。
なんら言葉で説明できるものがなくて。
勝手に少年が1人で成長しただけじゃん、と思えてしまう。
そのあたりの説得力のなさは反省材料だと思います。
ただ、少年がヴィンセントのことをあえて聖人と褒め称えるクライマックスシーンは定番ながらも涙腺を刺激する破壊力があって、なるほどこれがこの作品の評価を高めているのか、と少し納得。
市井に生きるろくでもない老人にもきちんとドラマがあって、彼は彼なりの人生を全うしているのだ、とした語りかけは胸をうちますし、人間臭いからこそ聖人であるのだ、と訴えるタイトル(原題)の意味の解き明かしも鮮やかだった、といえるでしょう。
要はそこに至るまでのエピソードの積み重ね方でしょうね。
欠けているのは独創性、ただそれのみ。
ビル・マーレイが思いのほかいい演技をしていたことに救われた側面もあると思います。
目の肥えた映画ファンには厳しい論調で語られそうではありますが、ちょっと優しい気持ちになれる、という意味で決して悪くはない1作だと思います。
ギリギリ及第点、ですかね。