アメリカ 2015
監督、脚本 ダン・フォーゲルマン
ジョン・レノンから若手のフォークシンガーにあてた「届かなかった手紙」を題材に、アル・パチーノが当事者に扮し、ロックスターの内面を描いた人間ドラマ。
おおよその筋立ては、若い頃に放蕩の限りを尽くした老年のロックスターが、届かなかった手紙をきっかけに交流のなかった息子との関係を再構築しようとする、というありがちなパターンの家族ものとして進行していくわけですが、これ、ハリウッド定番のセオリーを踏襲しているとはいえなかなか楽しいのは確か。
気さくなロックスターと一般人のサプライズ満載の出会いや交流を上手に演出してる、というのもありますし、ジョークと軽口が矢継ぎ早に飛び出す会話シーンのセリフまわしのうまさもよく練られてるなあ、と思いましたし。
名優アル・パチーノの年齢を感じさせない演技もこれまた素晴らしい。
もう、彼がなにかをするだけでいちいち物語に説得力が生まれてくるんですね。
こんなことが可能な役者って、本当に数少ないと思います。
ただ、個人的にはどう贔屓目にみてもロックスターには見えなかった、というのはありましたが。
まあそこはファンだから許す。
ジョン・レノンの名曲が重要なシーンでさりげなく流れてくるのもファンにはたまらないだろうなあ、と思います。
正直なところをいうと、ロックスター、ダニーが過去になにをやったかがよくわからないんで、息子が何を許せて何に対して許せずにいるのか想像することもかなわず、結果、ご都合主義的和解になっちゃってるのが気持ちを高揚させないとか、せっかくダニーが30年ぶりに作った新曲を聴衆がどう受けとめるのか、その顛末が描かれていないのが不満とか、全体を締める上で必要な細部の詰めが甘い上、自分で振ったのにも関わらず後始末が雑な話題がある等、気になる点がないわけじゃないんですが、 ゆるさもまた味、と納得してもいいかな、と。
雰囲気作りのうまさになんとなく丸め込まれてしまうんですよね。
大傑作、と言うわけではありませんがいい映画だと思います。
アル・パチーノファンは必見でしょう。