1977~80年初出 花郁悠紀子
秋田漫画文庫
<収録短編>
フェネラ
昼下がりの精霊
水面に咲く
風に哭く
伝説の女流漫画家、花郁悠紀子のSF系の短編ばかりを集めた作品集。
いや、正直唸らされましたね。
表現手法は当時の少女マンガの様式に沿ったものなので、ページを開いて即拒絶反応が出る人もきっと居ることだろうと思うんですが、この作品集、少女マンガであることを余裕で飛び越えてSFとして実に良質だったりするんですよね。
それが分かる人って、絶対に少数ではなはず。
最も特筆すべきは萩尾望都でも竹宮恵子でもない質感を各話が有していることではないでしょうか。
私が一番感心したのはタイムマシンによって傷つけられた空間の傷の修復というアイディアが光る「昼下がりの精霊」なんですが、表題作「フェネラ」も次元のほころびからおとぎ話の世界があふれ出すという設定が独特な秀作。
「風に哭く」なんてSFでしか表現できぬ詩情あふるる美しさ。
話の展開やオチが全く予想できないSF漫画を久しぶりに読んだ気がしましたね。
密度だけで比較するなら活字並の手強さ。
またそれがSF好きとしちゃあ心地よい。
つくづく夭逝されたのが惜しまれます。
このまま順当に進化を遂げていたら将来的にとんでもない名作を描かれていたのではないか、と思います。
化けるかも、じゃなくて、最初から大成することがわかってる状態。
まだ原石の状態だ、という論評もあるかと思うんですが、大きさ、透けて見える輝きが尋常じゃない。
この人の未来の筆力に酔わされてみたかったですね、残念。