韓国 1997
監督、脚本 キム・ギドク

キム・ギドクの長編第2作目。
フランスロケを敢行した作品で、フランス人俳優も何人か出てるんですが、内容そのものは処女作「鰐」と近い世界観、といっていいと思います。
どうしてもフランスじゃなきゃダメだった、というほど異国風情はなし。
このシナリオなら別に韓国で撮ってもかまわなかったのでは、と思ったりもしたんですが、そこは異邦人としての韓国人の孤独を描きたかった、ということなのかもしれません。
しかしそれにしても70年代ですね。
なんかもう若い頃の萩原健一とか松田優作がひょっこり顔をだしそうな雰囲気。
決して人が悪いわけではないんだけど、不良で小悪党で金に汚い主人公が、同郷の友をも巻き込んでフランス暗黒街の深みにはまっていく悲劇を描いた作品なんですが、もうね、ラストシーンが前半10分で予想できましたね。
で、その通りでしたし。
「傷だらけの天使」に涙した人間としてはこういう物語は全然嫌いじゃないし、むしろ好きなんですが、だからこそですね、焼き直し以上の価値が見出せるかどうか?がやっぱり重要だと思うわけです。
残念ながら既視感を突き破るほどのインパクトはなかったですね。
あと、ギドクにしては色々ルーズだ、と思える展開があったのも気になった。
好きなった女をうばうのに、実力行使せずに金で解決しようとしたりとか。
袋に詰められて殺されかけるシーンで、ゆるいアニメみたいな生還の仕方だったりとか。
どこか妙にリアリティに欠ける描写が多いんですよね。
やりたいことはすごくよくわかるし、伝わってくるものもあるんですが、なにかと詰めが甘い。
開花前夜、って事なのかもしれません。
どちらかというと熱心なファン向けですかね。