スペイン 1996
監督 アレハンドロ・アメナーバル
脚本 アレハンドロ・アメナーバル、マテオ・ヒル
スナッフ・フィルムを偶然見つけてしまったことから成り行きで事件の犯人を追うことになる二人組を描いたサスペンス。
スペインではそれまでの興行成績をぬりかえる動員を記録、映画を模倣する事件まで起き、社会現象と化した作品ですが、その前評判に過剰に期待しすぎるとちょっと肩すかしをくらうかも。
まず、題材そのものがそれほど新鮮ではない、というのはあるんですよね。
スナッフ・フィルム自体が当時にしてすでに都市伝説的なネタだったように私は記憶してますし。
映画やドラマの過剰な暴力表現に対する疑問の投げかけを合わせ鏡として事件を追う展開も、よくある手口といえばそうですし。
あまりにひっぱりすぎ、というのもあった。
終盤の進行はもう少しコンパクトにした方が確実に盛り上がった、と思います。
終盤まごついたせいで、事件の真相がとってつけたようなオチになってしまったことは否定できません。
そこはやはり単純にテクニック不足、と思う。
ただですね、それらマイナス要素を差し引いたとしても、圧倒的な語り口のうまさがあったことは確かなんです。
え、これはどうなるの?どういうことなの?と見る側の集中力を途切れさせない、やけに手馴れた誘導があった、とでもいうか。
人間関係の描き方も洒脱でしたね。
全く性質の違う二人を反目させつつ事件に落とし込む、というのがいい。
また、灯りひとつない真っ暗な倉庫でマッチの火を頼りに進むシーンや、わずか数秒でぶった切ることで恐ろしい緊迫感を産んでいる襲撃シーン等、これは非凡だ、と思える点もいくつかあった。
決して大傑作、というわけではないんですが、次作オープン・ユア・アイズにつながったのであろう才能の発露は散見できたように思います。
監督のファンとして細かい部分に目をつぶるなら、これは青春映画としてみるのがきっと正解でしょうね。
あんまり理詰めでアラ探ししちゃいけない。
若干尻の座りが悪い印象はあるんですが、それでもなんかおもしろかった、といえてしまうのが良さだ、とでも言っておきましょうか。