カナダ/アメリカ/ドイツ/フランス 2014
監督 デヴィッド・クローネンバーグ
脚本 ブルース・ワグナー
題材そのものにさして新鮮味はないと思うんです。
ハリウッドのセレブ達の、欲望と自己顕示欲にまみれたドラッグ漬けの裏側を描く、って、これまで似たような作品がなかったか、といえば、そうでもないように思いますし。
まあこんなものだろうな、という想像は安易に及ぶ。
ではそこでスキャンダラスであること以上に何を見せるのか、を考えた時、セレブ一家に産まれたアガサの屈折に焦点をあてるしかないように思うんですね、物語の構造上。
なにをしくじってるか、って、アガサを雇った落ち目のスター、ハヴァナであったり、その弟であったり、均一に描いてる点、でしょうね。
そのせいで、いざ終わってみれば結局誰の何を描写したかったのか、よくわからない有様でポカン。
もちろんアガサが実は主役であったことは最後まで見ればわかります。
でもそれが主役と感じられないんですね。
だからなぜアガサはあのような行動をとり、ラストシーンにいたる結末に導かれたのか、がしっかり伝わってこない。
ありていに言えば散漫。
ジュリアン・ムーアの怪演は確かに凄いです。
崩れた肉体をさらけ出してまでヨゴレ役を見事演じきった、とは思うんですが、そこはあんまり時間を割いちゃあいけなかったように思うんですね。
ブレてしまうんですよね、アガサのストーリーが。
うーん、どうしたかったんだろうなあ、監督は。
ミステリとも心理劇ともサスペンスともとれぬ、わかりにくい一作。
クローネンバーグはそのキャリアの終盤においてどこへ行こうとしてるんでしょうかね。
なんだか振り返ってみれば戦慄の絆が頂点であったような気がして困ってしまうファンの私だったりします。