アメリカ 1968
監督、脚本 ブライアン・デ・パルマ
デパルマの劇場長編デビュー作。
60年代のアメリカを3人の若者の会話劇の体でつらつらと描いた作品なんですが、今となっては見る人を強烈に選びそうな気もしなくはありません。
とりあえず後の、主にサスペンスにその手腕を発揮する監督らしさは微塵もなし。
ヌーヴェルヴァーグに色濃い憧憬がみられる、なんて評をどこかで見た記憶があるんですが、ヌーヴェルバーグ自体まるで詳しくない私としてはなんら言及する言葉を持ちません。
なんといいますか、散文詩風なんですね。
一貫したストーリーがあるわけではない。
格別テーマがあるようにも思えない。
ごく身近な日常の断片を濃厚な60年代の空気で包んで切り取ったような感じ、とでもいいますか。
ただそんな散漫さの渦中にあって、エンディングの強烈な戦争とマスコミに対する皮肉はコメディ調ゆえ、強烈に印象に残るものがありました。
はっきり言って後のカジュアリティーズやリダクテッドよりはるかに風刺が効いてます。
こういう洒落たことが出来るのになんでああいう方向にいっちゃったのか、よくわからないんですが、なにもかもが後年とは別物である、というのは言えるでしょうね。
ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。
余談ですが、この作品、VHS発売当時は「ブルーマンハッタンⅡ/黄昏のニューヨーク」のタイトルで発売されてます。
なぜデビュー作なのにⅡなのか、さっぱりわかりません。
デパルマファンにとっては興味深い作品だと思いますが、掘り起こして視聴して楽しめるのは本当に映画に詳しい人だけな気もします。