トルコ/フランス/ドイツ 2014
監督 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
脚本 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、エブル・ジェイラン

前作「昔々、アナトリアで」もよくわからない映画でしたが、変わらず今回もとても万人受けするとは思えない独自路線です。
カッパドキアでホテル業を営む主人公の老人と、その妹、嫁との関係を描いた人間ドラマなんですが、これは物語なのか、それともその生活の断片を切り取ったドキュメンタリー風のリアルライヴを模そうとしているのか、私にはさっぱり意図がつかめずどうにもこうにも。
まあとにかく登場人物、恐ろしくしゃべりまくります。
そのほとんどがそれぞれの主張をぶつけ合う舌戦、論戦であったりするんですが、それによって閉塞したお互いの関係が改善されるというわけでもなく、着地点のみいだせぬまま不和の度合いは増すばかり、って感じなんで、見ている側もひたすら疲れてくる、というか。
そりゃ現実は映画のようにすっきりまとまって大円団、なんてことは滅多にないのはよくわかってます。
でもだからといって延々自分をとりまく環境が決して幸福とは言いがたいことを、膨大な量のテキストを用意して会話劇の形で手を変え品を変え訴え続けられてもですね、そこに何を見出せばいいのか、私にはよくわからない。
非常に演劇的だ、と思ったりはしました。
岩窟を住宅に改装したカッパドキアの独特な風景を絵画的に切り取ったカメラは実に映画的なんですけどね。
そこでまた混乱するわけです。
密室劇でもいいようなテーマじゃないか、これ、と。
オチがまた、なんだそれ、とつっこみたくなるようなしおれっぷりだったのも混乱に拍車。
3時間にも及ぶ膨大な前フリを結局弱気の虫で落とすのかよ、と唖然。
アル中の不良住人が暖炉にあるものを投げ込むシーンとか、見どころがないわけじゃないんですが、全編に及ぶマシンガントークがなんの爪痕も残してない、と私には感じられて、言葉のレトリックはもうたくさん、というのが正直な感想。
理解の外、ですね。
語らぬ説得力もある、と監督に進言したい気分。
もうほんとうにカンヌはよくわからん。