1999年初出 石川賢
小学館ビッグコミックス 全2巻
西遊記を下敷きに、孫悟空を異形の怪物に見立てた終末SF。
プロットにさほど目新しさはないんですが、石川賢の精緻な作画が描く孫悟空という名の化け物は、作者ならではの忌まわしき暴力性に満ちていたように思います。
こういう形で西遊記を換骨奪胎できるのは永井豪か石川賢ぐらいでしょうね。
惜しいな、と思ったのはせっかくの凶暴なシナリオ展開が、おなじみの「神との最終戦争」みたいなところを落とし所としていた点。
阿弥陀仏を無慈悲なる天上界の殺戮者とするアイディアそのものがやはり70年代の遺物だと思うわけです。
作者は21世紀においてさえ、いまだデビルマンへの憧憬を捨てきれずにいたのか、などとその心情に思いを馳せてしまいましたね。
悪くはないんですが、ファン以外に訴えかけるものは乏しいかも。
シナリオ協力に若桑一人を迎えているだけはあって、物語の精度は高い、と思うんですけどね。