2000年初出 石川賢
小学館ikkiコミックス
蒙古帝国の大船団(文永の役)に戦いを挑む、謎の暗殺者集団を描いた仮想歴史群像劇。
元寇の裏側には実はこんな連中の暗躍があった!って、作者はやりたかったんだろうと思うんですが、うーん、やっぱりね、毎度のことながら緻密な舞台設定にそぐわぬ雑なシナリオ運びが難点かと。
石川賢の流儀は承知してるんです。
でもこの手の物語でただ粗暴なだけのキャラが勢いで敵をなぎ倒していっちゃあまずいと思うんですよね。
できることとできないことを明確にした上で暗殺者の超人性に光を当てていかないと、男一匹ガキ大将、喧嘩上等全国制覇みたいな感じになっちゃう。
つまるところ、鎌倉幕府とかフビライ・ハンとかどうでもよくなってくるんです。
どうせ力技でガンガンいくだけなんでしょ?みたいな。
歴史ものである必然性を失っちゃうんですよね。
晩年、作者は好んで歴史ものを手がけていたように思うんですが、こういう作品を読むとやっぱり石川賢はSFバイオレンスの人だなあ、と感じますね。
マニアのための一冊。
画力は微塵の衰えもなく、むしろ冴え渡ってるのが逆に悲しかったりも。