1982年初版 小堀洋/叶精作
スタジオシップ 劇画キングシリーズ全7巻
法で裁けぬ悪を罰するため、国家公安委員会の庇護の元、殺人を許可された3人の刑事を描くハードボイルドなバイオレンス。
まあ、ネタ的にはいかにも80年代というか、必殺仕事人というかハングマンというか。
テレビドラマとは違って、権力の側に合法的殺人者が存在してる、というのが怖いというか、大丈夫なのか?って感じですが、物語の成り行きが、人を殺しても良いと認められた刑事の心理的葛藤を起点としてるので、比較的共感を得やすい構造にはなってます。
特に普通の警官を特殺官に仕立て上げる序盤の展開なんて、心を捨て正義の執行者として手を血に染める覚悟を問われる内容で、ぐいぐい引き込まれるものがあります。
ボスである元警視正のキャラがいい。
何を考えてるのかわからない風なのが、先の展開を予想させないんですよね。
どこか小池一夫っぽい作劇だなあ、と思ってたら、原作者の小堀洋って小池の弟子だとか。
なるほど納得。
それなりに読ませるのは確かなんですけどね、やっぱり難点は3人の刑事の活躍を、序盤の緊張感を超えるドラマで演出できなかったことでしょうね。
割とね、これ、特殺官がやらなきゃなんないような事件か?って首をかしげる回が多いんですよね。
死でもって償わせるしかないと読者が納得できるような、法の外側に居座る悪が登場してこないんです。
結果、いざ活躍!とお膳立てが整った段階で、何故か物語はトーンダウンしていく、という有様に。
終盤でテコ入れとばかりに登場したブラディ・マリーとか、面白くなんなきゃおかしいのに、どこか尻すぼみなまま使いこなせてないのも減点対象。
キャラを存分に活躍させる場を作れなかった一作、といったところでしょうか。
最初の勢いはすごかったんですけどねえ、残念。
ちなみに叶精作の作画はまだ完成してなくて、表紙絵のような精緻さは発揮してないです。
7巻ぐらいで今の絵にようやく近づいてきた感じ。
なかなか再評価は難しい一作かもしれません。
というか、今気づいたけど、これワイルド7とネタかぶってるよね・・・。