ゆめのかよいじ

1988年初版 大野安之
少年画報社ヤングキングコミックス

一部マニアの間で異様に評価の高い作品。

2001年に、作者自身が加筆修正した新装版が角川書店から発売になってますが、角川版はどうにも評判がよくありません。

最終話が削除されてる上に、絵柄が変わってしまってるのだとか。

私は読んでないんで、わからないんですけどね。

オリジナル版を読んだ限りであえて言わせてもらうなら、リニューアル版がどうなっていようと別にどうでもいい、と少し思ったり。

というのもですね、熱心なファンほど私はこの作品に入れ込んでない、ってのが本音だったりするもので。

ノスタルジックで詩的だとか、年代物の醸造酒の香りが漂う叙情派SFだとか、絶賛のレビューをあちこちで見かけますが、どう考えたってTHAT’Sイズミコ(1984~)の方が10年先を行ってた、と思うんです。

物語性の解体と、横溢な実験精神を披露してみせたイズミコがアナーキーでラジカルな革命路線のパンクだとするなら、本作でやってることなんてオーソドキシカルで保守的な室内楽にすぎないような気がするんですよね。

いやいや、作風が逆行してねえか?と。

さらに、なにより余計だったのは、読者サービス、ないしは作者の趣味としか思えない濡れ場シーン(百合)に大きく誌面が割かれてること。

これね、どうしてもやりたかったのなら、直情的な肉の喜びではなく、同性に憧れる同性の、悩ましくも繊細な心の揺れ動きを丁寧に描写することに心砕くべきだった。

濡れ場とか、最後のおまけでいいんですよ。

少女の未成熟な内面を細やかに描けてこそ、ラストのSF的飛躍も意味を成す、ってなもので。

なんとなくね、安いソフトエロ路線の少し不思議な物語、で終わっちゃってる感じなんですよね。

第5話のような展開、物語作りにもっと連続性をもたせてくれてたらなあ、と思います。

オリジナル版は中古市場でものすごい値段がついてますけど、初読の方は要注意、でしょうか。

評価が二分する1冊なのは確かだと思いますね。

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