フランス/イギリス 1992
監督 ロマン・ポランスキー
脚本 ロマン・ポランスキー、ジェラール・ブラッシュ、ジョン・ブラウンジョン

偶然、クルーザーの旅で居合わせた夫婦同士の奇妙な交流を描いた人間ドラマ。
どことなく監督の初期作水の中のナイフのような質感があります。
水の中のナイフで、ヨットのオーナーであった倦怠期っぽい夫婦が、今回はピーター・コヨーテとエマニュエル・セリエ、同乗することになった青年がヒュー・グラント、といった感じでしょうか。
車椅子に乗った老人オスカーの赤裸々な夫婦生活の独白がストーリーの大半を占めるんですが、それもかつて描き切れなった2人の内面をひたすら掘り下げているかのようにも見え、とても興味深いです。
冷めていく男と、愛し続ける女、その対比は婚姻と言う制度の不完全さを提示しているようでもあり、愛と性のあり方を問うているかのようでもあります。
いったいこの物語はどこへ向かおうとしているのか、予断を許さなかったことは確かですね。
ただ、私が少しひっかかったのは、老人の妻ミミの執着気質とでもいうべき依存体質にまるで視線が向けられていなかったこと。
車椅子の老人はミミのストーカー被害にあっただけのかわいそうな人じゃん、という解釈も成り立つように思うんです。
オスカーの残酷な仕打ちでそれは相殺、と言う人もきっといるんでしょうけど。
終盤までは、インモラルな背徳さと背中合わせな薄ら寒い愛憎の極みにある2人が、なぜこんな関係性を築く事が出来るのか、 その答えを解き明かして欲しい思いで画面に釘付けでしたね。
問題はエンディング。
これ、どうなんだ、と私は首をひねりました。
まるで伏線なしの安っぽいベッドシーンに、すべてを御破算にするかのような唐突な終焉。
なんのための独白で、何の目的があって主人公はまきこまれたのか、さっぱりわからない。
なにより、オスカーとミミの関係が、結局なんだったのか、なにひとつ答えが出されていない。
これでは単に、くどくて面倒くさいだけのポルノ、と言われても仕方がないのでは、と私は思いました。
物語を結べていない、と私は思ったんですが、ファンはどう批評してるんでしょうね、この作品。
投げちゃってる、と言うのはあまりに酷評でしょうか。
うーん、私は水の中のナイフのほうがずっとおもしろかった。
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