アメリカ 1994
監督 ジョン・カーペンター
脚本 マイケル・デ・ルカ

ホラー作家の書いた一冊の本が、あたかも預言書でもあるかのように現実を改変、侵食していく恐怖を描いたパニックホラー。
これは現実なのか、それとも自分が狂っているのか、と葛藤する主人公の狂乱も見所のひとつですが、こういう形でカタストロフを描く、という発想に私は感心しましたね。
1冊の本が書店に並ぶことにより、ウィルスのように伝播し、世界を変容させていく、というシナリオはちょっと類を見ないものだと思います。
ただ、崩壊前夜である前半の描き方がですね、幾分説得力に欠けるか、と。
どこかわざとらしさ、過剰な演出がつきまとう、というのもありますし、ホラー作家にその本を書かせた存在の正体みたいなものも、どうにもはっきりしない。
いや、はっきりしないならはっきりしないままでもいいんですが、もっとパラダイムのようにですね、得体の知れない根源的な怖さをまとわせることは可能だったと思うんです。
とりあえず実際にクリーチャーらしきものを登場させたのは失敗だった、と思います。
そこは観客の想像にまかせておいて良かった。
なんだか急に陳腐になっちゃうんですよね。
出色なのはやはりラストシーンでしょうか。
まさか主人公をあんな場所に向かわせるとは思わなかった。
なんだこれはメタ化しつつあるのか?!とすら思える狂気漂う絵は、ホラー史に残る見事さだと思います。
前述したように、色々ひっかかる部分もないわけではないんですが、このラストが拝めたことで帳消し、といったところでしょうか。
90年代のカーペンターの作品の中では一番よく出来ているかもしれません。