アメリカ 2019
監督 チャド・スタエルスキ
原案 デレク・コルスタッド
追われる身になってしまった主人公ジョン・ウィックの、血まみれの逃避行を描いたシリーズ第三弾。
さあ、こりゃ大変だ、周りは全部敵だ、いったいどうやってこの窮地をくぐり抜けるつもりだ?!と最初は前のめりになって見てたんですが、よくよく考えてみたらこの人はシリーズ第一弾からずっとこんな感じだったなあ、と。
急速にしぼんでいく高揚感。
というかね、アクションシーンが多すぎですね、ぶっちゃけね。
サービス精神旺盛というべきなんでしょうけど、過激さも、それが常態化してしまうと過激でもなんでもなくなるわけで。
5分おきぐらいに殺し合いやられちゃあね、ちょっと落ち着け、と言いたくもなってくる。
物語にはメリハリというものが必要であって。
ここぞという場面で鞘から刀を抜くから緊張の度合いも高まるわけであって。
常に凶器を振り回しっぱなし、血しぶき飛ばしまくりじゃあ、安っぽいスプラッター映画と同じで惨殺シーンを目の端で追いながらユッケ食えてしまう、ってなもの。
もちろん高い評価を得ているシリーズですんで。
まだこんなにアイディアが残っていたのか!と仰天させられる格闘シーンの連続を見せつけてはくれるんです。
ガンフーに依存してないんですね。
序盤30分ぐらいで次から次へと目から鱗の動作設計が釣瓶撃ち。
ジャッキー・チェンの出番なんざもうねえ、と言わんばかりの創意工夫には心底脱帽しました。
チャド・スタエルスキはアクション映画の可能性をおし広げた、と言っても過言じゃない。
それゆえ、物語性の希薄さが惜しいんですよね。
主席連合といういささか漫画チックな組織をガジェットにこだわって演出してる点とか、悪くないと思うんですが、なにもかもが全部その内側で右往左往してるのがねえ、どうなんだろうと。
一作目を見たときはそれがいい、と私、書いてますけどね、3作も続いて代わり映えなし、ってのは悩ましいところだと思うんですよ。
これね、例えば警察組織とか、国家組織とか、1枚噛ませるだけで全然ストーリーの深みが違ってくると思うんですよね。
主席連合は世界の支配者かよ、って感じですしね。
てっきりこれで終わるもの、と思ってたら、さあ4作目に続きますよ、ってなエンディングも興ざめ。
いや、もう無理だろうと。
ストーリー、強引に捻じ曲げちゃってますし。
これを、つまらない、とは言いません。
けど、さらに期待させるものはもう残ってない、という感触も今回受けた。
望まれているうちに幕を引くのが華だと思うんですが・・・さて。
ただ、本作、アートとアクションを融合させようとしてるのか?と思えるシークエンスが終盤にあって、それがさらに顕著になれば別の領域に手をかけることになるかも、という気がしたりもするんですが、それが物語の深度を高めることにはなりそうにないのが難しいところ。
3部作で終わってればよかった、と言わずにすむことを祈る、と言ったところでしょうか。