1971年初出 望月三起也
ぶんか社コミック文庫
端麗な容姿と長けた弁舌で人心を惑わす悪徳のアンチヒーロー、ジャパッシュのあくなき権力への欲求を描いた作品。
相当早かったのだけは確かだと思います。
正義不在の悪党が、どんどんその力を肥大させていく物語を少年誌でやったのはこの作品が最初ではないでしょうか。
なにが特徴的か、って主人公ジャパッシュに比肩するライバル的存在が不在なことでしょうね。
誰も主人公の巧みな悪事を止めることができない。
挙句には私設軍隊を結成し、その目線は政権にまで向けられる。
似たようなアプローチは当時、ジョージ秋山ぐらいしかやってなかったと思います。
後のデスノートとか、コードギアスにも近い質感。
つまりはそれだけ先見の明が作者にはあった、ということ。
人気のあった作品らしいんですが、悪を行使する喜びを啓蒙しているように思える、と望月三起也自身が連載途中で編集部に中断を申し出ます。
真面目で一本気な人なんでしょうね、先生は。
結果、未完。
なので総合的な評価は難しいんですが、 もしこれが最後まで描かれていたらとんでもない作品になったのでは、という予感はひしひしと感じますね。
いったいどう終わらせるつもりだったのか。
一貫して、ドブ泥の中で輝く一条の正義を描き続けてきた作者の異色作。
これから、というところで終わってるのでストレスを感じてしまうかもしれませんが一読の価値はあり。