バイオレンスジャック(少年マガジン版)

1973年初出 永井豪
講談社マガジンKC 全7巻

デビルマンに勝るとも劣らぬ大傑作、と言いたいところなんですが、当時少年マガジンで連載されたこのシリーズは残念ながら未完。

人気が伸び悩んだ、みたいな話をどこかで目にしたような気もするんですが、あまり記憶に自信はありません。

いやもうね、半端じゃなくおもしろいです。

人気が出ないって、当時の読者は正気か、って言うぐらいおもしろい。

このテンションのまま最後まで突っ走って欲しかった、とつくづく思います。

今でこそ荒廃した弱肉強食の未来図を描いた作品は多いですが、漫画で初めてそれをやったのは間違いなくこのバイオレンスジャック。

巨大地震により、壊滅の憂き目をみた関東平野を舞台に、何とか生き抜いていこうとする人々のサバイバルを描いたSFドラマなんですが、もうね、マッドマックスなんて目じゃありません。

1巻の緊迫感なんて、ハリウッドが裸足で逃げ出すほど。

また登場キャラが絵も造形もすごいんです。

刃渡り20センチの巨大なジャックナイフを持つ2メートルの大男バイオレンスジャックに、鎧を着ていないと自らのの筋肉の締め付けで自死してしまうスラムキング、 どうやってこんなキャラを考えついたんだ、と唖然とするほど。

子供心には人犬も衝撃的でした。

目を背けたくなるほど残虐なのに、目を離す事ができない。

こんなの読んでたら親にしかられるのでは、とすら思った。

このシリーズが画期的だったのは、バイオレンスジャックもスラムキングも主役ではなく、実は突然荒野に投げ出された1人の少年が絶望の淵から生き残りを誓う物語であった点でしょうね。

70年代に、読者と近しい等身大の少年が無力さを噛みしめながら戦おうとするストーリーって、他には漂流教室ぐらいしかなかったのでは、という気がします。

ジャックとは結局何者なのか、そして主人公、拓馬竜は生き抜くことが出来るのか、後年漫画ゴラクで連載された続編ですべては明らかにされますが、私にとってのバイオレンスジャックはやっぱりこの7冊。

もう手がつけられない状態にあった、のりにのっている頃の永井豪の大作。

まずはこの7冊を。

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