1978年初出 手塚治虫
何故か09年映画化されましたが、なにゆえこの作品?と思いましたねえ。
もっと出来のいい作品はいっぱいあるのに、と。
悪徳を行使するスリルを描いた、インモラルでタブーな作品にしたかったようですが、結局アラバスターと同じでこの手のテーマを先生はいつも上手に消化出来ないんですね。
賀来神父は完全に人格が破綻してるし、澄子はなんの役割で物語に登場してきたのかさっぱりわからないし、なにより主役の結城を魅力的に描けなかったのが致命的。
もっとお耽美にフェロモン満開な中性的キャラだったらまた違ったか、と思うんですが、あまりに共感できる部分、いや、共感できないまでもなんだか惹かれる要素、みたいなのが、本当になくて。
それにこの描き方だとある意味ゲイに対する蔑視、ともとられかれない、と思うんですね。
読者としてはどこに目線を合わせていいのかわからない。
単純に政治悪を憎む復讐者の話で良かった、と思うんです。
同性愛の問題や宗教、モラルについてまで同時に平行して描こうとしてよくわかんなくなってる印象を私はうけました。
知名度の高い作品ですが、どうにも好きになれない一作ですね。