イギリス/アメリカ 1985
監督 テリーギリアム
脚本 テリーギリアム、トム・ストッパード、チャールズ・マッケオン
邦題はなぜか未来世紀になってますが、作品のオープニングで「20世紀のどこか・・・」と字幕が流れますんで、未来と言うよりは80年代当時の仮想の現実を描いた、と解釈したほうがいいような気がします。
でないと妙にアナログで古めかしさを残した小道具がいびつに進化した世界を、スチームパンクか?と解釈してしまいそう。
それこそがギリアムの真骨頂とでも言うべき奔放なイマジネーションの粋であったりもするわけですが。
とりあえずSF映画史にその名を残す未曾有の大傑作であることは間違いありません。
前述した、古いのか新しいのかよくわからないサイバーゴシックな世界観もとんでもないのですが、この作品がすごいのはディストピアな管理社会をユーモアのパッケージにくるんで徹底的にアイロニカルに描いたことでしょうね。
どこまで深刻にとらえていいものやら前半はいささか戸惑うんです。
デニーロ演じる修理屋なんて、どう考えても笑わせたいだろ、としか思えませんし。
とにかく狂騒的なんですね。
なにかというと周りに流されてしまう主人公。
状況に振り回され、母親に振り回され、仕事に振り回され、閉塞した想いを抱えながらも、そこから開放されるのは夢の中だけ。
奇跡的な出会いと運命の恋がそれを変えるわけですが、情熱に任せた行動が主人公の置かれた立場の危うい均衡を少しづつ崩していきます。
強烈なのは終盤の展開。
管理する側とされる側が逆転する恐怖が突然作品を不穏に彩り始めます。
ラストシーンはまさに絶句、ですね。
初めて見たとき、私はあまりに衝撃的でしばらくその場から動けませんでした。
訥々と流れ出すテーマソング「ブラジルの水彩画」が、耳にまとわりついて離れない。
一切の救いはありません。
また、その救いのなさをわざわざご丁寧に念押しする演出まである始末。
ひどいよ、なんとかしてあげてよ、と若かりし頃の私はもだえたものですが、振り返るなら、このラストであったからこそ、管理社会の歪みを他のどの作品よりも真に迫ってリアリスティックに描くことが出来たのだ、と思ったりもします。
ギリアムの最高傑作。
見ずに死ねるか、の部類。
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