男おいどん

1971年初出 松本零士
講談社マガジンKC 全9巻

作者の名をメジャーにした出世作であり、怒濤のマンネリズム四畳半ものの代表格。

しかしこれが少年マガジン掲載って、凄いなあ、と思います。

どう考えても少年読者が押入のパンツの山とサルマタケにシンパシーは感じないだろうって思うんですが、70年代のマガジンは相当攻めてましたからねえ。

並みいる連載陣の中ではまだ気楽に読める方、だったのかもしれません。

この頃同時に連載されていた大四畳半大物語や聖凡人伝と内容はほとんど何も変わらないのですが、さすがに一応は少年誌と言うこともあってか、お得意の、意味もなくベッドシーンで展開に困ったら酒飲ませとけってのが封印されてて、その分主人公のもてなくて貧乏で地位もなく無芸であることの苦悩が浮き彫りとなっており、なにかと痛々しい、ってのはあります。

事あるごとに蔑視の視線を浴び差別されて「畜生、いつかみていろ俺だって」とおいどんはパンツの山に埋もれて寝ながら泣くんですね。

いったいどんなに不遇で辛い青春時代を送ったんだ松本零士、と。

大四畳半大物語や聖凡人伝のような突き抜けたデタラメさ、野放図なばかばかしさがないので、正面からおいどんの苦悩と怨念に向き合うしかなく、読んでてひどく疲れる、ってのはありました。

そもそもですね、何をしたいのか全くわからず仕事も続かないその日暮らしの若者を肯定してやろうにも肯定の材料がない、って話であって。

ただ負けん気だけが強く、モラトリアムで、むき出しの若さだけが際立つ貧乏暮らし四畳半もの、って青春の断面ではあるんでしょうけど、ひたすらダウナーな息苦しさが私はちょっと好きになれなかった。

まあでもヒットしたんだからニーズはあった、ってことなんでしょうけど。

若い頃、似たような生活してたんで同属嫌悪みたいなものかもしれません、ひょっとしたら。

コメント

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