さそり

1970年初出 篠原とおる
小学館ビッグコミックス 全8巻

梶芽衣子の名を一躍有名にした「女囚701号/さそり」の原作にして、篠原とおるの出世作。

犯罪者を検挙するためならどんな悪辣な手段をも辞さない刑事、杉見の罠にはまって刑務所送りとなった松島ナミの監獄生活を描いた作品ですが、今あらためて読んでも普通に面白いです。

もちろん当時と今とでは女子刑務所も様変わりしてるんでしょうし、脚色もきっとあるんだろうと思いますが、刑務官をヒエラルキーの頂点とした閉鎖空間での権力闘争って、少々無茶をしたところで大きく失敗することのないプロットでしょうしね、時代に左右されないと思うんです。

それが女だけ、となるとなおさら。

刑務所を舞台に松島ナミというアンチヒロインを仕立て上げた作者の手腕は先見の明があったし、実に巧みだった、と思います。

悪知恵と機転で窮地をチャンスに変え、ヤクザまがいで非道な女囚や看守どもを次々と葬っていくストーリー展開はなんともいえないカタルシスがありましたね。

そりゃ人気も出るわ、と納得。

なぜ元ブティックの経営者である主人公がこうもスーパーレディなのか?という疑問がなくはないんですが、そのクールビューティぶりにいったん惚れてしまうと、まあ、それはこの際いいか、と思えてきたりもして、もうね、なにもかもが作者の掌の上、とはまさにこのこと。

唯一残念だったのは完結していないことですかね。

ナミの復讐を完遂した上での大円団が読みたかった、とつくづく思います。

描けた、と思うんですけどね、なにか事情があったのか、そのあたりはわかりません。

映画に夢中になった人が読んでも充分楽しめるシリーズだと思います。

篠原とおるの最高傑作でしょうね。

コメント

  1. […] 篠原とおるの作品を逐一追っていたわけではないので断言は出来ないんですが、おそらく作者はさそりのヒットによって、男も太刀打ちできぬスーパーレディを主人公にした漫画を描き続けることを宿命付けられてしまったのだろうと思います。 […]

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