イスラエル 2013
監督、脚本 アハロン・ケシャレス、ナヴォット・パプシャド
イスラエル映画なんて見たことがなかったので一体どんな感じなんだ、と興味津々だったのですが、さほどお国柄みたいなものは作品からは感じられず。
予備知識なしでヨーロッパないしはアメリカの映画、といわれたら違和感なく騙されちゃいそう。
機材の進歩がアイデンティティを希薄にしてるのかなあ、なんて思ったりもしたんですが、それだけ腕が確かである、という事なのかもしれません。
幼女殺人事件を追う警察と犯人の駆け引きを描いたスリラーなんですが、余分な説明は排除した上で、ある程度想像の余地を残しつつ、さくさくとストーリーが進んでいくのは小気味良い、とは思いました。
気安く他人をぶん殴って暴力で言うことをきかせるスタイルが横行しているあたり、どこか日本の70年代的だなあ、などと思ったりもしたんですが、まあなんといっても出色のキャラは被害者のオヤジでしょうね。
自分の娘が惨殺された恨みを晴らそうとする気持ちはもちろんわかります。
ですが、だからといって犯人と思しき男を証拠もなしに捕まえて拷問にかけようとする常軌を逸した行動は、さすがにこれ、どうなんだ、と思うわけです。
殺人事件そのものの陰惨さより、オヤジの狂気の方がはるかに怖い。
似たようなシチュエーションがプリズナーズでもありましたが、むこうはまだ逡巡と自己嫌悪の末の葛藤があったように思うんです。
ところがこのオヤジの場合、迷いは一切ないんですね。
むしろ楽しんでるんじゃないか、とすら思えてくる。
どこのスラッシャー映画だよ、って。
追従するオヤジの父親がまたさらに香ばしいキャラで。
この親子で別の作品が撮れるんじゃないか、と思えてくるぐらい。
おそらく描こうとしているのは連鎖する狂信的な暴力だと思うんですが、その部分に関しては既出有名作品と比較しても全く遜色ないように思います。
唯一問題があるとしたらやっぱりオチですかね。
いや、あっ、と言わされるのは確かなんです。
そんなところに!とラスト数秒で震撼。
ですがこのオチだと、真犯人がああも強情であることがどうにも解せない。
何を守ろうとしているのか、それが見えてこない。
自暴自棄になってる風にも見えませんでしたし。
なにゆえ真犯人は口を閉ざし続けたのか、そこに説得力のある理由があればさらにこの作品はそのグレードを高めたことと思います。
とりあえず次回作が楽しみな監督ではありますね。
高い力量と才能をみせつけた一作だと思います。