1969年初出 松本零士
小学館文庫

私が読んだのは合本になる前の旧版全2巻。
COMに連載された連作短編、四次元世界シリーズを収録したもの、と思われますが、シリーズに属さない他の短編も含まれているような気も。
基本どれもSFなんですが、まあとにかく暗い。
大人からも社会からも見向きもされない、生きるのに不器用な貧乏青年の苦悩をこれでもかと描写。
多くの短編で擬人化した虫が登場するんですが、虫を好んで描く人は本当に辛くて孤独な青年時代をおくった人だ、と言う話をどこかで読んだことがあります。
作者の下積み時代の苦労が反映されているのかもしれません。
どこかあすなひろしや初期の坂口尚に通ずる詩情があるなあ、と思ったりもしますが、私の場合それでも読んでいて結構しんどくなります。
もう本当に哀れでやりきれなくて。
各話に共通するテーマから察するに、SFの体裁を取り繕わなくてもこのシリーズは成立したのでは、と思ったりも。
漫画家残酷物語とかバイブルな人にとっては胸に迫るものがあるかもしれません。
これもまた松本零士の一側面であるとは思いますが、なかなか現代の共感は得にくいかもしれないですね。
ここから突き抜けて大四畳半シリーズに至ったのだとしたら、まさに前夜、と言えるかもしれませんが。
コアなマニア向けだと思います。
コメント
[…] 四次元世界でも似たような試みがありましたが、本作はあれほど惨めでやりきれない青春の苦悩を描いてはおらず、むしろどこかあっけらかんとしていてとっつきやすいです。 […]