妖怪HUNTER

2010年初出 井上淳哉
新潮社バンチコミックス

もちろんオリジナルは諸星大二郎。

過去の人気作を若手漫画家にリメイクさせて話題をさらう便乗商法は昨今の漫画業界にて、もはや常套手段ですが、それにしたって作品のチョイスが渋すぎるぞ、ってのはまあ、ありますよね。

作者が諸星ファンなのか、それとも編集部の画策なのかはわかりませんが、これを喜ぶのは一部の熱烈なマニアだけな気も。

で、そのマニアってのがなんせ諸星ですからやっぱり目の肥えた人達なわけです。

もう充分BTOOM!で地位は安定してるだろうに、なんでわざわざ自分からそんな風にハードルあげちゃうのか?と私はほんと思う。

原作凌駕するのは相当な難事業ですよ、これ。

こんな危ない物件に普通なら手は出さない。

そのあたりの嗅覚が利かないからこそBTOOMなんて漫画を描けるのかもしれませんが。

ま、それはともかくとして、技術はとても高い人だと思うので、良いか悪いかは別にしてそれなりのものにはきっと仕上げることだろうと私はある程度好意的に予測してたんですが、それも最初の数ページで早々に脱力。

もう、ため息しかでません。 

稗田礼二郎のなんたる軽いことか。

こんな馬鹿丸出しの稗田礼二郎を一体誰が受け入れるのか、という話で。

断言するがこんな大学教授は居ない。

ま、そもそも原作からしてそのあたりは微妙だったりはするんですけどね。

しかしさすがにここまで極端だと馴染む前に体が拒絶反応。

これを若い読者を意識した結果なのだとしたら、企画の段階で本を売らんとする客層を根本的に間違えてると言うほかない。

なんだかわかりやすくお涙頂戴に仕上げてしまったシナリオ改変にも幻滅。

「闇の客人」において、鬼踊りを踊るじーさんは故郷を捨てた独居老人だったからこそ、ラストのえもいわれぬ不気味さ、虚無感が際立ったんであって。

そもそも誰かを救ったり、感動させたりするような話ではないわけです。

そこを見誤ってる。

ああとんでもなく安くなった、ってな印象。

ここまで安くするならなにも稗田礼二郎じゃなくても良いじゃないか、と心底思う。

こういう方向性の仕事には向いてないと思います。

もうやめておいたほうがいい、が結論。

ていうか、諸星ファンにカミソリ送りつけられても文句言えない、と思います、私。

ある日突然化けるのでは?と思ってたんだがなあ、井上淳哉・・。

馬脚を現してしまったか。

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