アルカディア

アメリカ 2017
監督 アーロン・ムーアヘッド、ジャスティン・ベンソン
脚本 ジャスティン・ベンソン

アルカディア

カルト集団が自給自足で暮らす村で育った兄弟の、不慮の「帰郷」を描いたSFスリラー。

序盤の進行を追う限りでは、あまりに特異な環境で育ったがゆえに「外の世界」に馴染むことの出来ない兄弟が、良くない、とはわかっていても村の居心地の良さに再び染まってしまう「心理ドラマ」みたいな感じなのかな?と私は思ったんです。

SFと言っても色々ありますし、最近はパッケージの宣伝文句もあてになりませんし。

違った。

マジでSFだった。

なにがSFなのか?というのは激しくネタバレになっちゃうんで言及できないんですが、まさかカルト村を題材にしてこういう風にストーリーを展開させるとは・・と正直舌を巻きましたね。

村の不気味さ、不可解さをまるごと一気に解き明かす発想の転換はお見事だったと思います。

村に囚われて居るのではなく、囚われざるをえなかったのだとする物語の着地点はカルトそのものの色すらを変え、むしろ悲哀で彩ったと言っていいでしょう。

幾分強引すぎる気がしなくもないんですが、細部に目をつぶるならこの手の飛躍は大好物。

想像を刺激する余韻があるんですよね。

明かされた真実が物語を振り返ることでおのおののシーンをまるで違って見せる、というのは優れたスリラー、サスペンスの必須条件かと思うんですが、必要な要件は全て満たしてる、と私は思いましたね。

そこは低予算映画にしては十分及第点だった、と思います。

ただね、少し残念だな、と思える点もありまして。

あんまりドラマ作りが上手じゃないんですよね、監督。

兄弟を主人公にしてる割には、主人公が兄弟である必要性があんまりないんです、この映画。

二人の最後の顛末から考えるなら「結局兄弟ゲンカの延長じゃねえかよ!」というツッコミも十分成り立ってしまうのが玉に瑕。

逃れられぬカルトへの帰依、依存を描こうとしてるのかと思いきや、弟が土壇場でとんでもないことを言い出します。

もうほんとにね、なんじゃそりゃ、って話であって。

そんな動機で命がけの帰郷かよ!とあたしゃ腰がくだけた。

つーか、私が当事者なら、ぶん殴るか、その場で絶縁だ。

幼少期が特殊だったがゆえの、大人になりきれぬ幼児性に焦点をあてたつもりなのかもしれませんけどね、これは伝わりにくいし、せっかくのスリルが台無しになってしまう、と思う次第。

ほのぼのさせてどうする、って。

主人公、一人でも別に良かった、と思うんですよね。

その方が隔絶された村で孤立無援であることの絶望感、焦燥が際立ったように思います。

アイディア、プロットは間違いなくよく出来ていたんで、その中で登場人物たちをどう動かしていくのか、じっくり熟考、練り上げた上で新作に挑んでほしいですね。

いつの日か、文句なしの傑作をものにするかもな、と思わなくはありません。

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