アメリカ/スペイン 2016
監督 カルレス・トレンス
脚本 ジェレミー・スレイター
孤独でもてなくて社会的地位もない保健所勤務の男が、好きになった女性を誘拐監禁して檻に閉じ込めちゃうお話。
まあ、現実でも起こりえそうな感じのプロットではありますね。
そういう意味では歪んだ世相を反映している、といえるかもしれない。
反面、事件としてありがちなだけにそれを創作として発表するにはハードルが結構高いぞ、ともいえるわけで。
普通に監禁飼育じゃ二流のポルノ以下ですから。
どういう形で映画ならではのアイディア、意外性を忍ばせるか、それが肝となる。
そのあたり、見たままの状況がすべてじゃないんだよ、と男の行動に別の意味をもたせた物語作りはなかなか巧みだったように思います。
男は女を自分の思うがまま陵辱したくて監禁したわけじゃないんですね。
実は彼女を「救いたい」がための行動だった、というのがストーリーを意外な方向へと向かわせます。
ただまあ、理由はどうあれ男の行動そのものはとても擁護できるものではないし、ド変態野郎であることは間違いないんで、そこに嫌悪感を感じちゃったらアウトかとは思うんですが、負けじと女もサイコ野郎だったりするんで、その攻防はこの手の映画の割には意外と見応えがあって。
檻に閉じ困られているのは女のはずなのに、いつしかその構図、主従が逆転して見えてくる演出はなかなかのものでしたね。
中盤ぐらいまでの流れは決して悪くはなかった、と思います。
問題は終盤。
どうやって女は檻から脱出するか、が非常に大事な場面となってくるわけですが、そこがね、ちょっと雑に描かれちゃってるんですよね。
話の流れでなんとなく脱出できてしまった、みたいな。
ここをどう印象的に描くか、が全てだったと思うんですよ、私は。
脱出のシーンに、それまでの二人の攻防を全部集約するぐらいの気構えで撮らないと、やっぱり特異な設定が嘘くさくなっちゃうし、異常性も際立たない、と私は思うんですね。
結果、大胆なことをしでかした男の残念なお話になっちゃってるんですよね。
クライマックスからラストシーンへつなぐまでの流れに矛盾があるのもやや疑問。
どうやって女はあそこから貸倉庫へと移動できたんだよ、って。
監視カメラをかいくぐり、下着1枚で巨大な荷物を抱えて。
警察がでしつこくしゃばってくる展開も後から考えれば全然必要のないシーンでしたし。
惜しい、の一言ですね。
終盤をもう少し丁寧にこだわって作り込んでくれてたら化けてたかもしれない一作。
色々残念。