アメリカ 2016
監督 ダン・メイザー
脚本 ジョン・M・フィリップス

妻の死を契機に、すっかりタガがはずれてしまった破天荒なじいさんと、その孫の珍道中を描いたコメディ。
シナリオは実にわかりやすく、こちらの予想どうりの心温まる?場所へ着地するんで、そういった意味での意外性は全くありません。
本当の自分に正直になれ!的なテーマ自体が、この手の映画じゃ無難に既定路線と言ってもいいんじゃないかと。
じいさん、実は元特殊工作員だった、みたいな設定も、ありがちといえばありがち。
もうちょっと色々裏切ってくれないと、というのが正直なところですかね。
なんだかね「あのロバート・デ・ニーロがここまでやるのか!」という驚きだけで終わっちゃったような気がしますね。
なんせ序盤でいきなりデ・ニーロ演ずるディックの自慰シーンですし。
ま、誰がじじいの手慰みを見たいか!という話だったりはするんですけどね。
んでデ・ニーロ、死ぬまでにどうしても若い娘とエッチがしたいんだ、と孫に懇願したりもしますし。
言うこと成すこと下ネタ全開で、ち◯こを孫の顔面にのせて大笑いしてたりもしますし。
「タクシードライバー」「レイジング・ブル」「ゴッド・ファーザー」あたりで彼に心酔したファンにとっては唖然、でしょうね、間違いなく。
70歳超えてなにもこんな仕事受けなくても、と私は思ったりもするんですが、やると決めた以上は役柄に徹して完璧にやる、ってことなんでしょう、きっと。
そこは見上げたプロ根性なんでしょうけど、もうちょっとね、レジェンドとして自分のイメージを守ってくださっても良かったんですよ、とあたしゃ思わなくもない。
というのもね、それほど笑える映画、ってわけでもないからなんです、この作品。
そりゃツボにはまったシーンはいくつかありました。
けどそれもデ・ニーロがやってるからツボにはいったわけで。
やっぱり笑いってのは落差だと思うんです、私は。
まずフリがあって、それをどういう形でオトすのか、そこに大きな斜度、転換がないと笑えないわけです。
タイミングも重要。
ひとつテンポを間違えただけでもうアウトって、往々にしてよくあるケースだと思いますし。
そのあたり、全部「鈍い」んですよね、この映画。
ただひたすらボケ続けられても面白くもなんともなくて。
下ネタに過剰に依存してるのもゲンナリ。
下ネタって一番簡単だと思うんですよ。
素人がやったってウケるのが下ネタで。
だからお笑い芸人は、若いうちから下ネタで笑いを取ろうとするな、とたいてい指導されますよね。
下ネタばかりだと永遠に技術が向上しないから。
アメリカのコメディ映画にそんなこと言ったって、はあ?何を言ってるんだこいつは?ってなもんでしょうけど。
もしこれがデ・ニーロじゃなかったらどうだったか?を考えてみてほしい、と思いますね、制作側には。
彼にらしくないことをやらせて笑いを取るのは演芸であって、映画であるならそれだけに寄りかかってるように感じられる時点でダメだろうと。
とりあえず関西人的感覚でいうなら、デ・ニーロおらんとこであちこちスベってんねん!といった感じ。
なにかと微妙。
その一言ですね。
こういう映画を見ると改めて笑いの文化の差を感じたりもしますね。