ハードコア

ロシア/アメリカ 2016
監督、脚本 イリヤ・ナイシュラー

ハードコア

1人称視点(FPS)で撮影されたSFアクション。

POVといえばPOVなんでしょうけど、主人公の顔を全く映さないあたり(終盤でチラリと出てきますが)シューティングゲーム的アプローチ、というのが正解でしょうね。

およそゲームの世界では映画の撮影技法、スケール感にどこまで肉薄できるかを目標として進化してきたわけですから、いわば逆輸入、とも言えますね。

なぜわざわざ逆輸入せねばならんのか?はよくわからないですけどね。

ただ、FPSによる撮影を貫き通したことで、奇妙な臨場感、想像する余地が生まれていた事は確か。

はっきり言ってシナリオは箸にも棒にもひっかからないレベルです。

サイボーグ兵士にエスパーって、昔の少年ジャンプかよ、って話であって。

なのに、なぜか知らんがずっと見てられる。

結局、全体を俯瞰する構図、多角的なショットがないから、主人公が今どこに居て何をしてるのか、それを知りたい欲求が生まれてくるんですよね。

映像を追っていくことで、だんだん全体像が把握できてくるんですが、ふと気を許せば次の瞬間にはもう別のカットに移ってる。

ええっ、今度はどこ、これ?

最後まで、同じことの繰り返し。

これが計算によるものなのかどうなのかはわからないんですが、FPSだからと説明的にならないスピード感、テンポの良さが映像に無理矢理注視させる効果をもたらしていたように私は思います。

さらに私が感心させられたのはカメラワーク。

ド素人のPOVとは違ってね、ちゃんと何を映して何を排除するか、考えられた動きがあるんですよね。

これ、主人公ヘンリー役のカメラマンは大変だったろうなあ、と思います。

自然さと作り込みを同居させなきゃいけないわけですから。

もし、ゲームと違う点があるとするならそこでしょうね。

すべてが設計どおりのグラフィックじゃこの「見積もり込みの不安定感」は出せなかったことだろうと思いますね。

二度と同じことはできないアイディア一発勝負の映画だとは思いますが、ま、これはこれでありかな、と。

ロシア映画の革命児、ティムール・ベクマンベトフが製作に噛んでる、というのも興味深い。

酔う人は速攻で酔ってしまうかもしれませんが、意外にも映画とゲームの明確な線引きを逆説的に証明してみせた気がしますね。

秀作だと思います。

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