イギリス/フランス 2015
監督 ブライアン・ヘルゲランド
原作 ジョン・ピアソン
60年代のロンドンに実在した双子のギャング、クレイ兄弟をトム・ハーディが1人2役で演じた作品。
いやこれトム・ハーディは本当に大変だったろうなあ、と単純に思います。
技術は向上しているとはいえ、モーションキャプチャーで動きを取り込むところからまずは始めたんだろうと思うんで。
ほとんど出ずっぱりでしたしね、双子の兄弟。
常に架空の自分にむかってトムは演技し続けてるわけで。
特に兄弟ゲンカのシーンなんて自分で自分を違和感なく殴んなきゃならない。
そこはほんと2役を感じさせないスムーズな動作で、キャラを巧みに演じ分けてたように思います。
監督もいかにも合成と感じさせない、いい仕事してた。
ただまあ、双子は双方とも暴力を行使することもいとわぬ裏家業、という設定もあってか、キレる演技がどうしてもかぶって見えた、ってのはあった。
そこまでつっこむのは酷かもしれませんけどね。
で、肝心の内容ですが、正直予定調和です。
実話ものにありがちな、栄華とその後の転落を足早に描きました、って感じ。
近作でいうならブラック・スキャンダルとほぼやってることは同じ。
というか、遡るなら楽々スカーフェイスぐらいまでは余裕で辿り着けてしまうぐらい、ありがちな物語です。
そこに一切の新鮮味はない。
結局、実話が元だからそれでいいんだ、という話なのか、否か、ってことだと思うんですね。
例え実話であろうと、それがあまたの焼き直しにしか見えないのであれば大胆に脚色すりゃいいじゃないか、と私は常々思ってるんで、その意味では本作、いささか工夫がないと言わざるを得ない。
せっかくの双子なんです。
なんで双子の他者には理解しえぬ親密な絆をもっと掘り下げて描かないのか、と。
それができてたら、これはギャングものにおける戦慄の絆だ、なんて評価もありえた、と思うんですよ。
マイナーな作品を持ち出してわかりにくい例えで面目ない。
双子の兄の嫁のナレーションで物語を道案内する、という試みは面白かったですが、私の結論としてはトムの2役を楽しめるかどうかがすべて、だと思います。
それ以上のものは見えてこなかったですね。
トム・ハーディファン向けの作品でしょうね。