ロスト・バケーション

アメリカ 2016
監督 ジャウマ・コレット=セラ
脚本 アンソニー・ジャスウィンスキー

あまり人に知られてないビーチで1人サーフィンに興じていたら、いつのまにかサメが浅瀬にまで接近してきてて、追い詰められた挙げ句、岩礁に取り残されたまま砂浜まで帰れなくなってしまった、さてどうする?主人公は生き延びることが出来るのか?ってなワンアイディア勝負の作品。

なんとなくインディーズでがんばってる若手監督が低予算で苦労して撮りました、って感じの題材です。

セラほどの知名度のある監督が今更やるような内容じゃないな、と思ったりも。

さて、息抜きなのか、箸休めなのか。

とりあえず、かなり映像にこだわってるのは確かですね。

特に序盤、単にサーフィンしてるだけのシーンを空撮あり水中カメラありの全方位から360度舐めるように撮影してるのには、なんか別のジャンルの映画でも見てるような気分にも。

さらには時折スローで再生して臨場感を煽る念の入れよう。

お得意の端末画面をスクリーンに重ねて映し出す手法も健在。

後半、クラゲに水中で囲まれるシーンなんかは幻想的美しさがあって、そのこだわりもまあ全くの無駄ではなかった、と思えるんですが、それ以外はそこまで予算かけなくても、と思ったり。

サーフィン映画じゃないんですし。

映像が美しいのは結構なんですが、そっちに腐心する以上にもっと気をつかわなくてはいけない点があったのでは、というのが正直なところ。

海で孤立し、誰の助けも得られない、というシチュエーションはかつて話題になった「オープン・ウォーター」にも近いものを感じたりもしますが、本作の場合、前者に遠く及ばないのはなんといっても焦燥感のなさ、でしょうね。

足に裂傷を追い、波に打たれながら寒さに震え、岩の上で一昼夜を明かしているというのに、もうね、主人公、ダイハード並みにタフなんです。

何より私が致命的だと思ったのは、喉の乾きを訴えるシーンが皆無であったこと。

あまりに人間の生理を顧みぬ無尽蔵なヒロインの体力に、現実感のなさはひたすら加速。

最終的にサメをどう回避するか、のオチもどこかマイナーなホラー映画のような安直さで興ざめ。

総じて言うなら、知恵と工夫でサメと対峙するスリル満点な駆け引きがないし、失血死に怯える恐怖、打開の糸口の見えぬ恐怖等を見せつける、緊張感あふるる演出がない。

またラストシーンが恐ろしく余計で。

なんなんだこのベタベタな安いドラマは、と。

誰もその名を明かさないビーチの謎とか、付き従ったまま離れようとしないカモメとか、これ、どう考えても伏線だろう、と思われる部分が別段伏線でもなんでもなかった、ってのも拍子抜けでしたね。

どうしたセラ、の一言に尽きますね。

なんかこう言う作品を見ると私は彼を過大評価してたのか?と不安になってくるので本当に嫌だ。

苦手なジャンルに挑んで失敗した、と思いたい。

次はもう、いつものリーアム・ニーソンでいいから、と言いたくなる一作でしたね。

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