フランス/ベルギー 2015
監督、脚本 クレマン・コトジア
国際治安部隊としてアフガニスタンに駐留するフランス軍兵士を襲う、不可解な事件を描いたスリラー。
DVDのジャケットの叩き文句には「アクションスリラー」と書かれてますが、アクションは微塵もありません。
単に発砲することをアクションと言うならそうでしょうけど、それで納得する人はまず居ないと思いますし。
どちらかというとミステリっぽいスリラーですね。
何がミステリなのか?ってことなんですけど、アガサ・クリスティーの某小説並みに「兵士が一人ずつ消えていく」不気味さがそう、と言えるでしょう。
そして、誰も居なくなったりはしないんですけどね。
むしろ誰も居なくなってしまった方が面白かったのでは・・・という気もするんですが、そのあたりは見た人の好みにもよるか。
眠ると忽然と姿を消す、というアイディアはなかなか良く出来てた、と思います。
必然として、睡眠を奪われてしまうわけですから、兵士たちは。
その割には眠れない苦痛に尺を割いて、さらに主人公たちを追い込んだりしないのがよくわからなかったりはするんですけど。
それよりも、一体誰が犯人なんだ?という点に注力していたりする。
ま、謎解きがメインなのは当たり前といえば当たり前なんですが、この作品が特異だったのは、どうやらなにか計り知れない力が働いているらしい、という落とし所を早々と用意していたこと。
スリラーなんだけど、伝奇SFっぽい質感を有していたりするんですよね。
物語は、超常現象を信じない大尉と、昔からの習わしを守る村人との間での諍いを中心に進行していきます。
まともな尺度では測れない出来事が起きてるらしい、と誰もが心の底では認めているんですけど、軍隊という性質上、それを容認することができない。
なんせ一つ間違えば脱走罪で軍事裁判ですからね。
「おばけが居ます」じゃ上層部には通用しないわけで。
わかっていながらも常識的な捜索手段を捨てきれない大尉の葛藤は、それなりに見応えがあって。
残念だったのは、とにかく絵的に地味だったこと。
映像の8割が砂漠の乾いた景色なんですよ。
いくらドラマがスリリングでもさすがにこれは飽きてくる。
あと、超常現象が起きていると言う事実を提示するだけで、事象そのものを深堀りしなかった点にどこかすっきりしないものが残る。
アラーの聖地、というだけではあまりに説得力にかける。
薄気味悪さを引き立てる題材が少なすぎるんですよね。
むしろ派手に「おばけ」でも出しておいた方が広くアピールできたんじゃないか?という気さえしてくる。
呪われた?軍隊のドラマとしては、物語の結び方も含めて、よくできた脚本だと思うんですが、ちょっと想像力任せすぎたか、と思います。
終盤で洞窟を捜索するシーンがあるんですけどね、あそこでなにかを発見させないと!と私は思いましたねえ。
具体的なものじゃなくていいんですよ、それまでの流れをひっくり返すようなことなら何でも良かった。
悪くないんだけど最後までどこか盛り上がらないままだったなあ、というのが結論。
渋い映画なんですけどね。
ひょっとすると足りなかったのは、ホラーっぽい演出だったのかもしれません。
一風変わった戦場もの、として好事家の記憶に残る一作にはなるかもしれません。