アメリカ 2015
監督 ジャウマ・コレット=セラ
脚本 ブラッド・イングルスビー

またリーアム・ニーソンにこの手の配役を振るのかよ、と見る前から幾分ゲンナリしていたことは確かなんですが、開始15分、ちょっとまて、これは違うぞ、と俄然前のめり。
なんだこれやたらおもしろいじゃないかよ、と。
いや、特に新しいことはしてないんです。
ギャング映画でおなじみの裏切りと破滅を描いた作品ですし、オヤジと子の断絶もあちこちで使いまわされているネタ。
でもそれを不測に干渉しあう関係性の中で、ひくにひけない展開へと導く手管がなんとも上手で。
やりつくされているように思われる題材を、よくぞここまで精緻に組み立てなおしたことだ、とつくづく感心させられましたね。
定番とマンネリの渦中にあって今回、セラは物語の精度を上げることに徹底的にこだわってきたように思います。
これまでのリーアムとセラの作品ってね、おもしろいんだけど、どこかコミック的でつっこむ余地が残っていたように思うんです。
もちろんそれがいい意味で楽しさにつながってる部分もあった。
しかし今回、その手の隙は一片たりとも残すまい、と細部までガチガチに構築。
全く途切れぬ緊張感。
予断を許さぬ展開。
争う必要はないはずなのに争わざるを得ない哀しみがこれでもかとスクリーンを染め上げます。
褒めすぎかもしれませんがセラはなんだか名匠の佇まいすら帯びてきましたね。
エド・ハリスの名演が光ります。
傑作でしょう。
わかっちゃいるんだが面白い、そんな一作だったと思いますね。